
創業融資のスペシャリスト INQ

最新記事 by 創業融資のスペシャリスト INQ (全て見る)
- ひとり会社(一人会社)とは?メリット・デメリットから設立方法まで完全ガイド - 2025年2月28日
- 収入印紙とは?必要なケース、購入方法をわかりやすく解説 - 2025年2月28日
- 経営理念とは?重要性と基本的な作り方、社内で浸透させる方法を解説 - 2025年2月28日
ひとり会社(一人会社)は、社長一人だけで運営するシンプルな会社形態として注目を集めています。フリーランスや副業からのステップアップを考える人や、自分のペースでビジネスを展開したい人にとって、魅力的な選択肢です。
しかし自由度が高い一方で、責任やリスクもすべて自分一人に集中するという側面もあります。
本記事では、ひとり会社の定義やメリット・デメリット、設立方法から運営のコツまでを解説します
1. ひとり会社(一人会社)の基本知識
ひとり会社(一人会社)とは、代表者が1人で設立・経営を行っている会社のことを表します。株式会社や合同会社などの法人形態であっても、役員・株主・従業員がすべて1人という点が特徴です。
具体的には、代表者が以下を兼任します。
- 代表取締役(経営責任者)
- 株主(出資者)
- 従業員(労働者)
一般的な会社との違い
項目 | ひとり会社 | 一般的な会社 |
意思決定 | 代表者1人で迅速に決定可能 | 複数の役員・株主間での合意が必要 |
経営資源 | 限られたリソースでの運営 | 複数の人員・資本を活用 |
責任の所在 | すべての責任が代表者1人に集中 | 分担・共有される場合が多い |
コスト面 | 人件費がかからず、オフィスも最小限で済む | 従業員の人件費や大規模オフィスの維持費が発生 |
スケーラビリティ | 事業拡大に限界がある | 人員や資本の増加により拡大が可能 |
最近増加している理由と社会的背景
最近ひとり会社を設立する人が増えつつあります。その理由を時代背景と照らし合わせてまとめました。
1.テクノロジーの進化
ひとり会社が増加している背景には、テクノロジーの急速な進化が大きく影響しています。インターネットの普及により、物理的なオフィスに縛られることなく、リモートワークやオンラインビジネスが可能となりました。特に、Web会議システムやクラウドサービスの利用が一般化したことで、地理的な制約を受けずにビジネスを展開することができます。
さらに、AIツールや自動化ソフトウェアの登場により、営業・マーケティング・経理などの業務を効率的に行うことが可能になりました。これにより、1人でも高い生産性を維持しながら事業を運営できる環境が整ったことが、ひとり会社の増加を後押ししています。
2.働き方改革と多様なキャリア志向
日本社会においては、終身雇用や年功序列といった従来の雇用形態が徐々に崩れ始めています。これに伴い、フリーランスや個人事業主としての働き方が一般化し、より自由で柔軟なキャリアを求める人々が増加しています。特に、若年層においては「自分らしい働き方」や「ワークライフバランス」を重視する傾向が強く、副業や独立を選択するケースが増えています。
また、定年後のシニア層においても、長いキャリアを生かしてコンサルタント業や専門職として独立する例が多く見られます。これらの価値観の変化が、ひとり会社という形態を選ぶ背景となっています。
3.法制度・政策の後押し
日本政府は、経済の活性化やイノベーションの促進を目的として、起業支援に力を入れています。例えば、会社設立時の資本金を1円から可能にする制度改正により、以前よりも低コストでの会社設立が可能になりました。
また、スタートアップ向けの補助金や助成金、税制優遇措置などが充実していることも、起業のハードルを下げる要因となっています。
さらに、行政によるビジネスマッチングや創業支援セミナーの開催など、起業家をサポートするエコシステムが整いつつあることも、ひとり会社の増加を後押ししています。
4.経済環境の変化とリスク回避
不安定な経済状況が続く中、固定費を抑えた経営モデルとしてひとり会社が注目されています。従来の企業のように多くの従業員を抱えることなく、オフィスも必要最低限にすることで、経営リスクを最小限に抑えることができます。特に、景気の変動に対して柔軟に対応できる点が魅力となっています。
また、スモールスタートで事業を始め、成功の兆しが見えた段階で事業を拡大するという戦略を取ることで、大きな借入やリスクを背負わずに事業展開が可能です。
このようなリスク回避の観点から、ひとり会社を選択する起業家が増えているのです。


ひとり会社(一人会社)のメリット
ひとり会社にはどのようなメリットがあるのでしょうか。主なものを以下にまとめました。
1.意思決定の早さと自由度の高さ
ひとり会社の最大のメリットの一つは、意思決定の早さと自由度の高さです。従業員や役員がいないため、会議や稟議(りんぎ)といったプロセスを経ることなく、経営者自身の判断で迅速に意思決定を行うことができます。これにより、市場の変化や顧客ニーズに柔軟に対応でき、ビジネスチャンスを逃しにくくなります。
また、自分のビジョンや価値観を100%反映させた経営が可能なため、独自のブランドを作り上げることができます。特に、クリエイティブな分野やニッチなマーケットでの事業展開において、迅速な意思決定は大きな強みとなります。
2.経費や運営コストの削減
ひとり会社は、従業員を雇用しないため、人件費や社会保険料の負担を大幅に削減することができます。また、オフィスを構える必要がなく、自宅やコワーキングスペースを利用することで、賃料や光熱費などの固定費も抑えることが可能です。
さらに、業務内容によってはアウトソーシングを活用することで、必要なスキルを持つ専門家にだけ業務を依頼し、効率的なコスト管理が可能となります。
このように、経費を最小限に抑えつつ、利益を最大化することができるのが、ひとり会社の大きなメリットです。
3.柔軟な働き方の実現
ひとり会社は経営者自身がすべてのスケジュールを管理できるため、非常に柔軟な働き方を実現できます。仕事をする場所や時間を自由に設定できるため、ライフスタイルに合わせた働き方が可能です。例えば、ワーケーションやノマドワークのように、旅先やカフェなどでも業務を行うことができます。
また育児や介護などの家庭の事情に応じて、労働時間を調整することも容易です。これにより、ワークライフバランスを重視した働き方が実現でき、ストレスの軽減やモチベーションの維持にもつながります。
4.収益の独占が可能
ひとり会社では、事業で得た収益をすべて経営者自身が受け取ることができます。株主や従業員への配当や報酬の分配が不要なため、利益を独占することが可能です。また、経営者個人の判断で報酬額を調整できるため、節税対策を考慮した柔軟な資金管理が可能となります。
さらに、利益を事業の成長に再投資するか、個人の資産形成に充てるかを自由に決められるため、長期的な視点での資産運用や経営戦略を構築しやすくなります。
このように、収益を最大限に活用できる点は、ひとり会社ならではの大きな魅力と言えるでしょう。
ひとり会社(一人会社)のデメリット
ひとり会社を設立することにはデメリットもあります。ここからは主なデメリットを解説します。
1.責任とリスクの集中
ひとり会社では経営者がすべての責任を負うため、リスクが集中する点が大きなデメリットです。事業の成功も失敗もすべて経営者自身の判断と行動にかかっており、失敗した場合の損失もすべて自分が背負うことになります。
また、経営戦略、営業活動、財務管理、顧客対応といった多岐にわたる業務を一人でこなさなければならないため、過重労働や精神的なプレッシャーが大きくなりがちです。さらに、業務が滞った場合や判断ミスをした場合、事業全体に悪影響を及ぼす可能性があり、倒産のリスクも高まります。
このように、責任とリスクが経営者一人に集中する点は、ひとり会社特有の大きな課題です。
2.信用力の課題
ひとり会社は一般的に社会的な信用力が低いと見なされることが多く、取引先や金融機関からの信頼を得にくいというデメリットがあります。特に、設立間もないひとり会社は、財務基盤が脆弱であると判断されがちで、銀行からの融資が難しい場合があります。
また、大企業との取引では、業務継続性のリスクを懸念され、契約を結ぶ際に不利な条件を提示されることもあります。さらに、法人としての信用力が低いため、取引先から前払いを求められるなど、キャッシュフローの管理にも支障をきたす可能性があります。
このように、信用力の課題は、ひとり会社が事業を拡大する際の大きな壁となります。
3.成長の限界
ひとり会社では経営者自身がすべての業務をこなすため、業務量に限界があり、事業の成長に制約がかかります。特に、受注が増加した場合や、新規事業に挑戦したい場合、時間的・労力的な制約から対応が難しくなることがあります。
また、一人での経営では専門的な知識やスキルに限界があるため、戦略的な成長が難しく、競争力の低下を招く可能性もあります。さらに、事業規模が拡大しても人材を増やさない限り、経営者自身の労働時間を増やすしか方法がなく、結果としてワークライフバランスが崩れるリスクがあります。
このように、ひとり会社は成長に限界がある点がデメリットとなります。
4.事業継続性のリスク
ひとり会社では経営者が健康を損なったり、事故や災害などの不測の事態に見舞われたりした場合、事業が完全にストップするリスクがあります。経営者の能力に依存するため、代わりの人材がいない状態では、顧客対応が滞ったり、納期に遅れたりすることで、信用を失う可能性が高まります。
また、事業の引き継ぎが難しく、突然の廃業に追い込まれるケースもあります。さらに、経営者が引退を考えた際に、後継者がいない場合、事業の売却や清算を余儀なくされることがあります。
このように、事業継続性のリスクが高い点は、ひとり会社の大きなデメリットです。
ひとり会社(一人会社)の設立方法
ひとり会社を設立する場合に必要な手続きや準備、申請の流れなどをまとめました。
必要な手続きと準備
- 会社の基本事項の決定:会社名(商号)、事業内容、本店所在地、資本金、事業年度、役員構成(基本的に代表取締役のみ)を決めます。
- 印鑑の作成:会社の代表印、銀行印、角印を作成します。これらは登記申請や銀行口座開設に必要です。
- 定款の作成と認証:会社のルールを定めた定款を作成し、公証役場で認証を受けます(電子定款の場合は印紙代が不要になります)。
- 資本金の払込み:決めた資本金を個人名義の銀行口座に振り込み、払込証明書を準備します。
- 登記申請:法務局に設立登記を行います。これには登記申請書、定款、印鑑届出書、資本金の払込証明書などの書類が必要です。
設立費用の詳細
- 定款認証費用:紙の定款の場合、認証手数料50,000円+収入印紙40,000円(電子定款の場合は印紙代不要)。
- 登録免許税:株式会社の場合、資本金の0.7%(最低15万円)、合同会社の場合は一律6万円。
- 印鑑作成費用:代表印、銀行印、角印のセットで1〜3万円程度。
- その他費用:必要に応じて、司法書士や行政書士への依頼費用(数万円〜10万円程度)。
- 合計費用の目安:株式会社の場合は約20〜30万円、合同会社の場合は10万円前後。
定款作成のポイント
- 絶対的記載事項:会社名(商号)、事業目的、本店所在地、設立時の出資額、発起人の氏名・住所、公告の方法など。
- 任意的記載事項:株式譲渡制限、取締役の任期、利益配分のルール、決算期の設定など。
- 電子定款の活用:電子定款を利用すると、印紙代(40,000円)を節約できます。電子認証を行うためには、電子署名ソフトとICカードリーダーが必要です。
- 事業目的の記載方法:具体的すぎると将来的な事業展開に支障が出るため、ある程度包括的に記載することが望ましいです。
登記申請の流れ
1.必要書類の準備
- 定款(認証済みのもの)
- 登記申請書
- 発起人の同意書
- 資本金の払込証明書
- 印鑑届出書
- 役員の就任承諾書
2.法務局への提出:本店所在地を管轄する法務局に書類を提出します。
3.登記完了後の手続き:
- 法人印鑑証明書の取得
- 法人銀行口座の開設
- 税務署への法人設立届出書の提出
- 都道府県税事務所、市区町村役場への各種届出
4.設立後の注意点:社会保険・労働保険の加入(必要に応じて)、年間の決算・納税手続きの準備。
ひとり会社(一人会社)の運営のコツ
ひとり会社を運営する場合、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。運営のコツを紹介します。
1.効率的な業務管理方法
ひとり会社では、すべての業務を一人で管理する必要があるため、効率的な業務管理が重要です。タスク管理ツールを使って業務を「見える化」することで、優先順位を明確にし、漏れを防ぐことができます。
また、時間管理を徹底することで、集中力を維持し、生産性を向上させることが可能です。特にポモドーロ・テクニックのような時間管理術を活用すれば、疲労を軽減しつつ高いパフォーマンスを維持できます。
さらに、ルーチンワークは自動化ツールを使って効率化することで、本来注力すべき業務にリソースを集中できます。業務の優先順位を重要度と緊急度で分類し、戦略的に進めることも成功のポイントです。
2.外部リソースの活用術
ひとり会社では、全てを自分でこなそうとすると時間も労力も限界があります。そのため、専門性が高い業務や自分が苦手な分野は、積極的に外部リソースを活用するのが賢明です。クラウドソーシングを利用すれば、必要なスキルを持った人材をプロジェクト単位で確保できるため、コストを抑えつつ高品質な成果を得られます。
また、経理、税務、法務などの専門知識が必要な業務は、プロにアウトソーシングすることで、ミスを防ぎリスクを回避できます。さらに、業務効率化のために、会計ソフトやマーケティングツールなどのSaaSを活用するのも有効です。外部リソースの活用によって、自分の強みを最大限に活かしつつ、弱みを補完することができます。
3.会計・税務の基礎知識
ひとり会社において、会計・税務の管理は避けて通れない重要な要素です。特に収支管理を徹底するために、会計ソフトを活用し、日々の経費管理や収支報告を効率化することが求められます。税務知識が不足していると、思わぬ税負担や罰則を受けるリスクがあるため、基本的な税務知識の習得は必須です。確定申告の手続きや法人税の計算方法、経費の適切な計上方法など、基礎的な事項を把握しておくことで、税務リスクを回避できます。
また、節税対策として、経費計上のルールを理解し、正確に処理することで、会社の資金繰りを健全に保つことが可能です。複雑な税務処理や判断が必要な場合は、税理士のサポートを受けることで、専門的なアドバイスを受けられ、安心して経営に集中できます。
4.リスク管理の重要ポイント
ひとり会社は、事業の成功も失敗もすべて経営者一人にかかっているため、リスク管理が特に重要です。事業リスクとしては、顧客の減少、取引先の倒産、競合の台頭、法規制の変更などが考えられます。これらのリスクを予測し、事前に対策を講じておくことで、想定外の事態に備えることができます。
また、資金繰りリスクを回避するために、キャッシュフローを定期的に確認し、半年先までの資金計画を立てておくことが必要です。さらに、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクに備えるため、情報セキュリティ対策を強化し、データのバックアップ体制を整えることが重要です。
経営者に万が一のことがあった場合に備え、経営者向けの生命保険や事業休業保険に加入することで、会社の継続性を確保できます。これらのリスク管理を徹底することで、安定した経営基盤を築くことが可能です。
ひとり会社(一人会社)のメリット・デメリットを理解しよう
ひとり会社は、意思決定の自由度や経費の削減、柔軟な働き方を実現できる一方で、責任の集中や信用力の課題など、特有のデメリットもあります。自分のビジネススタイルや目指す目標に合った形で、メリットを最大限に活かし、リスクを最小限に抑えることが成功のカギです。
本記事で紹介した情報を参考に、あなたにとって最適な会社設立・運営方法を検討してみてください。