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私募債とは、どのようなものかご存知でしょうか?
資金調達の方法の1つだと何となく推測はできても、メリット・デメリットまで詳しく理解している人は少ないかと思います。
そこで、本記事では私募債について詳しく解説します。
- 私募債とは何か
- 私募債のメリット・デメリット
私募債とは
私募債とは、資金調達の1つで企業が発行する社債を、少数の投資家間で直接引き受けることを指します。
縁故債とも呼ばれ、限られた人数と一定の条件内で発行されます。これは中小企業が銀行を頼らない直接金融によって資金調達が行える方法です。
社債とは
そもそも私募債とは社債の一つです。
社債とは、企業が資金調達を目的として発行する債券のことであり、企業がする「借金」の一種です。企業は銀行から借入を行うのが一般的ですが、社債は投資家から借入を直接行うことで資金調達する方法です。
また、社債には次の2種類があります。
- 公募債
- 私募債
公募債
公募債とは、金融機関を経由して不特定多数から募集を図る社債です。大規模な資金を調達したい上場企業や大企業に適しており、公開市場においての人数制限はありません。
私募債
私募債は、特定の投資家でから募集を図る社債です。
中小企業では、主流の資金調達である、不特定多数の投資家を対象としている株式や社債(公募債)の発行は、信用力や経営情報の開示の面で不利であり、手続き等も煩雑であったため困難でした。その一方で私募債は、中小企業であっても資金調達を行いやすい方法の1つとして注目されています。
私募債の仕組み
私募債には様々な種類があるため、今回は最も利用しやすい「少人数私募債」の仕組みについて紹介します。私募債を発行した企業は、投資家(購入者)に対して、事前に定めた期間(2〜7)に、定めた方法で利息を支払います。定める期間は2〜7年が多いとされています。同時に、償還時点に元金を返済することを定めて販売することで、企業は資金調達を実施する(可能になる)という仕組みです。
私募債の種類
私募債は、次の2種類に分かれています。
- 少人数私募債
- プロ私募債
少人数私募債
募集対象者数を限定した私募債を指します。
企業が50人未満の特定の投資家に対して発行する社債を、少人数私募債といいます。一般的に、発行企業の役員や身内、知人、取引先などに引き受けてもらう場合が多い傾向にあります。企業自身が購入者を募らなくてはならないため、信用が大切です。
少人数私募債の主な発行条件は次の3つになります。
- 勧誘する対象者の人数が50人未満であること
- 発行総額を1口当たりの金額で割った口数が50未満であること
- 発行後の所有者も50人未満にするために、譲渡制限を設けること
プロ私募債
適格機関投資家のみを対象とした私募債を指します。
私募債で、販売相手が金融機関や要件を満たした企業など、適格機関投資家である場合をプロ私募債といいます。
プロ私募債では、発行に際して販売対象者の人数制限がないのに加え、発行総額・1口当たりの最低発行額にも限度がないのが特徴です。
また、プロ私募債の1つとして「銀行保証付き私募債」と「信用保証協会保証付き私募債」と呼ばれるものがあります。
プロ私募債の購入者である適格投資家が、金融機関のみ(メガバンク、地銀等)のケースがあります。これを銀行保証付き私募債といいます。
加えて、銀行と信用保証協会が共同でその私募債の保証を行う私募債のことを、信用保証協会保証付き私募債といいます。
私募債を利用するメリット
私募債を利用するメリットは次の4つです。
- 借り入れのしやすさ
- 償還期限や方法の柔軟さ
- 発行コストの低さ
- 会社の形態の柔軟さ
借り入れのしやすさ
私募債は金融機関と比較して、借り入れがしやすいです。金融機関からの借り入れる際には「保証人や担保」の設定と審査が必須となってます。しかしながら、私募債であれば、それらは不要であるため、より借り入れはしやすくなっているといえます。
償還期限や方法の柔軟さ
私募債は、金融機関からの借り入れと違い、直接金融であるため、償還期限・方法・利息などを借り手の側が任意で設定できます。もちろん、あまりにも発行企業本位な設定では社債購入者を集めることはできませんが、購入希望者と交渉しつつ、柔軟な社債の償還期限や償還方法の設定が可能です。
発行コストの低さ
資金調達の実施にかかるコストが低いのが、大きなメリットです。私募債は公募債と比較して発行に掛かる手数料や手間を省くことができます。例えば、公募債の場合、発行に必要な有価証券届出書の提出が私募債では必要ありません。有価証券届出書の作成は司法書士などの専門家に依頼することが一般的です。そのため、発行に際してコストを抑えることができます。
会社形態の柔軟さ
株式発行による資金調達は、株式会社しか行うことができません。しかし、私募債による資金調達は、法人であれば会社形態を問わず発行できます。また、株式のように議決権を気にする必要ありません。
私募債を利用するデメリット
私募債を利用するデメリットは次の2つです。
- 償還期日には一括返済が必要
- 場合によっては調達コストが高くなる
償還期日には一括返済が必要
前提として、社債は株式と違い借金であるため、返済の必要があります。
そして前述の通り、社債は月々は利息の支払いのみとなっていますが、償還期日には一括での返済が必要となっております。
そのため償還期日前に余裕を持って返済資金の確保をする必要があるでしょう。
場合によっては調達コストが高くなる
債権者に対する利息の支払いに加え、プロ私募債で紹介した「銀行保証付私募債」と「信用保証会保証付私募債」には手数料が発生します。そのためコストが高くつくことはあります。
私募債のまとめ
本記事では、資金調達方法の1つである「私募債」について解説しました。
私募債は「借り入れのしやすさ」など中小企業にとって魅力的なメリットが多くある一方で、「償還期日の返済の難しさ」などのデメリットも同時に存在します。
メリットデメリットどちらも踏まえ、長期的な視点に立ち判断していきましょう。