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起業を考えている人にとって、資金を集める手段を理解することは必須といえるでしょう。その中でも「社債」は金融に関する基礎知識として知っておくべき項目の一つです。
本記事では、社債の基礎から起業に役立つポイントまで解説します。なおスタートアップが活用することの多い「少人数私募債(私募社債)」についても、本記事内にて解説しております。
社債とは?
社債は、企業が事業資金を調達するために発行する債券の一種です。起業家にとって、社債は株式発行とは異なる資金調達の選択肢として注目すべき手段といえます。
その特性を理解することで、事業計画や資金調達戦略を効果的に立てることができるでしょう。
社債の基本的な仕組み
社債は、企業が投資家から資金を借り入れるために発行する「借用証書」のようなものです。投資家は社債を購入することで企業に資金を提供し、その見返りとして定期的な利息と満期時の元本返済を受け取ります。
主な特徴
- 固定された利息(クーポン):投資家に支払う利息は事前に決められており、企業は定期的に支払います。
- 満期の設定:社債には返済期限があり、満期時に元本を返済する必要があります。
- 信用力が必要:社債を発行するには、企業の信用力が重要です。


社債と株式の違い
社債と株式はどちらも資金調達の手段ですが、特徴や影響が明確に異なります。それぞれのメリット・デメリットを理解することで、事業計画に最適な選択が可能になるでしょう。
1. 資金調達後の経営権の影響
社債
社債は端的に言えば「借金」です。資金を調達しても企業の所有権や経営権に影響を与えません。起業家は引き続き経営権を完全に保持できます。ただし、返済義務があるため、財務の健全性に注意が必要です。
株式
株式を発行すると、企業の所有権を投資家に分割して提供する形になります。出資者が増えることで、経営権が希薄化し、重要な意思決定に影響を受ける可能性があります。特に大規模な出資を受ける場合、経営の主導権を失うリスクがあります。
2. 資金調達コスト
社債
社債には利息の支払い義務があります。利率は発行時の起業の財務状況等に応じて決まります。返済期間や金利負担が財務に影響を及ぼすため、慎重な資金計画が必要です。
株式
株式には返済義務がありません。配当金も必須ではなく、利益が出た場合に支払うかどうかを決定できます。ただし、出資者が増えることで、将来的に利益を分配する必要性が高まる場合があります。初期段階では株式を安価に提供するため、企業の価値が上がった後に「安く所有権を渡してしまった」と感じることも考えられるでしょう。
3. リスクと財務への影響
社債
定期的な利息支払いと元本返済が義務付けられるため、キャッシュフローに大きな影響を与えます。売上や利益が不安定な初期段階の企業にとっては負担となる可能性があります。一方で、返済が完了すれば借金はなくなり、経営権を保持したまま資金調達が完了します。
株式
株式発行により、返済の負担はありませんが、所有権の分散により経営の自由度が低下する可能性があります。投資家が経営に積極的に関与する場合、経営方針に対立が生じるリスクもあります。ただし、株式の活用は事業の成長に応じて柔軟に調整できるため、長期的な資金調達手段として適しています。
4. 信用力とブランドへの影響
社債
社債を発行するには、一定の信用力が求められます。そのため、社債発行は企業の信頼性を高める手段となる場合があります。起業初期段階では信用力が不足しており、社債の発行が難しいことがあります。
株式
株式発行により、著名な投資家やベンチャーキャピタルからの出資を受けることで、企業のブランド力を高める効果が期待できます。特にスタートアップ企業では、株式を通じた資金調達が一般的です。
社債と株式、どちらを選ぶべきか?
起業家が社債と株式を選択する際には、以下のポイントを考慮する必要があります。
社債が適しているケース
- 経営権を完全に保持したい場合
- 安定した収益が見込まれ、利息や元本返済の負担に耐えられる場合
- 信用力があり、低金利で資金調達が可能な場合
株式が適しているケース
- 初期段階で売上や利益が安定しておらず、返済負担を避けたい場合
- 投資家からの資金だけでなく、知識やネットワークを活用したい場合
- 長期的な事業成長を目指し、柔軟な資金調達を行いたい場合
社債の種類
社債にはさまざまな種類があり、それぞれの特徴が異なります。資金調達戦略を立てる際には適切な選択をすることが重要です。以下では、主要な社債の種類を紹介します。
1.少人数私募債
少人数私募債は、企業が少人数の投資家(通常は50人未満)を対象に発行する社債のことです。銀行などの金融機関からの融資とは異なり、資金調達先を自社で選び、直接的に社債を発行する点が特徴です。一般的には、中小企業やスタートアップなどが資金調達の手段として活用しています。
この「私募(しぼ)」という言葉は、「一般に公募せず、限られた相手に勧誘する」という意味を持ち、証券取引法などの規制が緩やかになるケースが多く、スピーディーかつ柔軟な資金調達が可能です。
特徴
- 勧誘人数が50人未満:法令により、社債を勧誘する相手が50人未満である必要があります(社債の保有者ではなく勧誘した人数が対象)。
- 金融商品取引法の緩和対象:50人未満の私募であれば、有価証券届出書の提出など厳格な規制が一部免除されます。
- 利息を設定できる:発行する企業側が利率を自由に設定でき、年利3~5%程度で設定されるケースが一般的です。
- 償還期限も柔軟に設計可能:3年〜5年など、中長期の返済スケジュールを企業側で決められます。
- 担保・保証が不要なケースも多い:銀行融資と違って、物的担保や第三者保証が不要な場合もあります。
起業家へのメリット
- 資金調達の選択肢が広がる:創業期や成長フェーズにある企業は、銀行からの融資が受けにくいことも多くあります。少人数私募債であれば、銀行に依存せずに直接投資家から資金を集めることが可能です。
- 資本を希薄化せずに資金調達が可能:株式の発行による出資(エクイティファイナンス)とは異なり、私募債は借入型の資金調達であり、経営権を手放さずに済むというメリットがあります。
- 信用力のアピールになる:私募債を発行して資金調達に成功すれば、「一定の信用を得ている企業」として対外的な印象が良くなり、今後の融資や取引で有利に働く可能性があります。
注意点
- 返済義務がある:私募債は「借入」と同じ性質であるため、満期には元本と利息を返済しなければならないという点に注意が必要です。資金繰りが苦しくなるリスクもあります。
- 投資家との信頼関係が不可欠:勧誘できる人数が限られているため、基本的には知人・取引先・支援者などとの信頼関係が前提です。信頼を損ねると今後の資金調達にも大きな影響を与えます。
- 法的な制限・条件あり:「50人未満」のルールを守らなかった場合、金融商品取引法違反に問われる可能性があります。また、反復継続的な募集をすると「公募」と見なされることもあるため、法的な枠組みの理解と確認が必要です。
2. 普通社債
普通社債は、最も一般的な形式の社債で、定期的に固定利息を支払い、満期時に元本を返済する仕組みです。
特徴
- シンプルな構造:投資家にとって分かりやすく、信頼性が高い。
- 信用力が重要:発行には企業の信用力が求められる。
起業家へのメリット
- 安定的な資金調達が可能。
- 経営権を希薄化せずに済む。
注意点
- 利息の支払いが固定されているため、キャッシュフローの安定性が必要。
3. 転換社債
転換社債は、一定条件のもとで社債を株式に転換できる権利が付与された社債です。
特徴
- 株式転換のオプション:投資家にとって魅力的な選択肢を提供。
- 利息が低め:株式転換の可能性があるため、通常の社債よりも利息が低い傾向。
起業家へのメリット
- 低コストで資金調達が可能。
- 株価が上昇すれば、株式転換によって返済負担が軽減される。
注意点
- 株式転換が行われると、経営権が希薄化する可能性がある。
4. ワラント債
ワラント債は、社債に株式購入権(ワラント)が付属したものです。
特徴
- 株式購入権付き:投資家は、一定価格で株式を購入できる権利を持つ。
- 利息が低め:ワラントが付くことで投資家のリスクが軽減され、利息が低く設定される。
起業家へのメリット
- 株式発行を伴わずに資金を調達できる。
- 株式購入権が行使されると、追加の資本を得られる。
注意点
- 株式購入権が行使されると、株主の持ち分が希薄化する可能性がある。
5. 劣後債
劣後債は、企業が倒産した場合に他の債権者よりも返済順位が低い社債です。
特徴
- リスクが高い:投資家にとって返済順位が低いため、高い利息が設定される。
- 長期資金調達に適している:満期が長いことが多い。
起業家へのメリット
- 高リスクを取る投資家から資金を集められる。
- 自己資本に近い性質を持ち、財務の柔軟性が向上する。
注意点
- 高い利息負担が発生するため、事業の収益性が重要。
6. 負担軽減型社債
企業が一定条件のもとで早期に償還できる権利を持つ社債です。
特徴
- 企業に有利な条件:市場金利が低下した場合、より低利の資金調達に切り替え可能。
- 利息がやや高め:投資家にとって早期償還のリスクがあるため、利息が高く設定される。
起業家へのメリット
- 金利環境の変化に対応しやすい。
- 財務コストの最適化が可能。
注意点
- 償還時にまとまった資金が必要となる。
7. 変動利付債
利息が市場金利に連動して変動する社債です。
特徴
- 金利リスクを分散:市場金利が上昇すると利息も増加する。
- 安定性が高い:投資家にとってインフレリスクを軽減する手段。
起業家へのメリット
- 初期コストを抑えられる可能性がある。
- 金利上昇局面では投資家からの需要が高まる。
注意点
- 金利上昇時には利息負担が増加する。
起業者にとっての社債の意義
起業家にとって、社債は資金調達の選択肢として非常に重要な役割を果たします。特に、企業の成長を加速させるための資金が必要な場合や、経営権を維持しながら資金を集めたい場合に、その意義は大きくなります。以下では、その意義を解説します。
1. 経営権を維持しながら資金調達が可能
株式発行と異なり、社債は出資者に経営権を与える必要がありません。そのため、起業家は株主の意見に縛られることなく、自身の経営方針を貫くことができます。これは、特に起業初期段階でビジョンを実現したい起業家にとって大きなメリットです。
2. 資金調達の柔軟性が高い
社債には多様な種類があり、企業の状況や目的に応じて選択することができます。例えば、低コストで資金調達したい場合には転換社債やワラント債、長期的な資金が必要な場合には劣後債を活用するなど、柔軟な戦略を立てることが可能です。
3. 企業の信用力向上
社債を発行するには、一定の信用力が求められます。そのため、社債を発行し返済を完了することで、金融機関や投資家からの信頼を高めることができます。この信用力は、将来的な追加資金調達や取引先との関係構築にも寄与します。
4. 利息支払いが予測可能
社債の利息は固定されている場合が多いため、資金繰りの計画が立てやすいというメリットがあります。これは、事業のキャッシュフローを安定させたい起業家にとって大きな利点です。一方で、株式の場合は配当が利益に連動するため、予測が難しいことがあります。
5. 資本コストの最適化
社債は、株式と比較して資本コストが低い場合があります。これは、株式発行による配当の負担や経営権の希薄化を避けることができるためです。特に、成長性の高い事業を展開する企業にとっては、コストを抑えつつ事業拡大を目指す戦略に適しています。
6. 長期的な資金調達に適している
社債は、満期までの期間が長期にわたるものも多く、長期的な資金ニーズに応える手段として有効です。これにより短期借入金の返済プレッシャーを軽減し、安定した事業運営が可能になります。
7. 投資家層の拡大
社債を発行することで、株式市場に参加しない投資家層にもアプローチできます。特に、低リスクを好む投資家や機関投資家にとって、社債は魅力的な投資対象となります。このように投資家層を広げることは、企業の資金調達力を高めるだけでなく、ブランド価値の向上にもつながります。
社債について理解しよう
社債は、企業や起業者が資金を集めるための重要な手段です。その基礎知識を理解することで、自分のビジネス計画に最適な選択を行うことが可能になります。この記事が、起業を目指す方の参考になると幸いです。