若林 哲平
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行政書士法人INQではこれから起業するという方から、補助金についてのご相談をよく頂きます。
創業時の資金調達方法として、補助金をアテにしている方は意外に多いです。
補助金は活用すべき
創業系の補助金は大いに活用すべきです。
補助金は税引き前の利益と同じですから、利益率10%の事業の場合、300万円の補助金なら(補助率を無視すれば)、3,000万円の売り上げに相当します。3,000万円の売り上げのために投下するコストや労力を考えると、取り組めるならば取り組んだ方がいいのは間違いありません。事実、有能な創業者は有効に補助金を活用しています。
創業時の資金繰りには役に立たない
一方、誤解を恐れずに言えば、
創業時の資金繰りという意味では、補助金は何の役にも立ちません!!
ほとんどの補助金は、資金が必要なときに調達できるものではなく、創業時の資金繰りという意味ではまったくアテにできないものなのです。
その理由は次の通りです。
- 期間が決まっている
- 対象となる経費が決まっている
- 後払い
- 時間がかかる
- 補助率が決まっている
もう少し詳しく説明させて頂くと、
期間が決まっている
補助金には「公募期間」と「補助対象期間」があります。
前者は補助金の申請を受け付けている期間。〆切です。
後者は事業を実行する期間。その期間内に支出した経費が補助の対象になりますよ、というもの。
タイミングが合わないと使えないのです。
対象となる経費が決まっている
補助金ごとに補助の対象となる経費(または対象とならない経費)が決まっています。
対象外経費をいくら請求しても支給されません。
使いたい経費とマッチしないと使えないのです。
後払い
一般的な補助金の流れは、次の通りです。
- 公募
- 公募要領に沿って申請書を作成
- 申請
- 審査
- 採択
- (交付請求)
- 申請した事業を実行
- 支出した領収書等を整理して報告・請求
- 交付(補助金の支払い)
このように、事業を実行し(経費を支出し)、ちゃんと実行したことを報告してからの後払いなのです。これを「精算払い」と言います。
その反対の前払いのことを「概算払い」と言います。概算払いの補助金は割合としては多くなく、ほとんどの補助金が精算払いです。
時間がかかる
上記の補助対象期間が1年以上である補助金が多いです。
補助対象期間終了後に報告・請求を行って1〜2ヶ月後に支給となりますと、1〜9まで1〜1.5年はかかります。
補助率
支出したものが全額返ってくるわけではありません。補助率が決まっています。
たとえば補助率2/3であれば、支出した経費総額の2/3が補助の対象となります。
補助事業を実行するために450万円経費を支出して、後に300万円が支給される、こんなイメージです。
補助金の有効な活用法とは?
では、補助金はやらないほうがいいのか?やらなくていいのか?
そんなことはありません。
上記を踏まえて補助金を有効活用できれば必ずご事業の助けになります。
ではどのように活用すればいいのか?
融資と組み合わせる
融資には公募期間はなく、条件を満たせば通年申込が可能です。また、融資対象外となる資金使途もありますが、補助金よりは幅が広いです。融資制度にもよりますが、申込から1〜2ヶ月で資金が口座に振り込まれます。
創業直後の資金調達としては、融資が最も適していると言えます。
- まずは融資で創業直後の資金繰りをカバーし、
- 創業者向けの補助金にタイミングを合わせて申請し、
- (採択されたら)融資で調達した運転資金で補助事業を行い、
- 後払いされた補助金でさらに資金繰りを改善する、または新たな投資を行う
というのが理想的な流れです。
補助金を担保のように評価して融資
また、補助金の採択が決まっている場合には、補助金が担保のように評価され、融資が受けやすくなります。その場合には、
- 補助金にタイミングを合わせて申請し、
- 補助金採択を有力な返済原資として示して融資を申し込み、
- 融資で調達した運転資金で補助事業を行い、
- 後払いされた補助金でさらに資金繰りを改善する、または新たな投資を行う
という流れになります。
まとめ
このように、補助金はそれ単体では創業当初の資金繰りの役には立たないものの、融資と組み合わせることで、非常に有効な資金調達方法となります。
東京都限定の創業サポート事業(融資)と創業助成事業(補助金)のように、特定の融資制度等を利用していることが補助金申請の要件になっているものもあります。
ぜひ融資と補助金をうまく組み合わせて、事業を次のステージへ!!