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スタートアップや中小企業が融資を受ける際、「無担保無保証」を利用することが多い傾向にあります。
しかし、「無担保無保証」とは「土地建物等の担保や第三者の保証が不要」という意味であり「法人の代表者個人の連帯保証は不要」という意味ではありません。
代表者個人が負う連帯保証のことを「経営者保証」(代表者保証)といいます。
日本政策金融公庫には、一定の要件を満たす経営者が融資を受ける際に法人代表者の方の連帯保証を不要とする制度として「経営者保証免除特例制度」があります。
経営者の中には、経営者保証の有無をまったく気にしない方もいますが、経営者保証が免除されていた方が、心理的負担が少ないことは言うまでもないでしょう。
本記事では日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度について解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
経営者保証免除特例制度とは
経営者保証免除特例制度とは、日本政策金融公庫(以下、公庫)で融資を受ける際に、法人代表者の方の連帯保証を不要とする制度です。一定の条件を満たせば経営者(代表者)保証を外して融資を受けることができます。
経営者保証とは、経営者個人が会社の連帯保証人となることです。
経営者個人が会社の連帯保証人となること(保証債務を負うこと)。企業が倒産して融資の返済ができなくなった場合は、経営者個人が企業に代わって返済することを求められる(保証債務の履行を求められる)。 引用元:中小企業庁:経営者保証のガイドライン
公庫では下記の融資など特定の融資制度を除き、代表者保証が付くのが原則です。
- 新創業融資
- マル経融資
- 資本性ローン
2018年春にこの経営者保証免除特例制度の適用要件が緩和され、代表者保証が免除される対象範囲が広がりました。
さらに新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、いわゆるコロナ融資における経営者保証免除の要件が緩和されています。
これまでの経営者保証免除特例制度
2018年春までの経営者保証免除特例制度は次のような概要でした。
事業資金を利用する方であって、次のいずれの要件も満たす方(注)
- 税務申告を2期以上実施し、かつ、事業資金の融資取引が1年以上あり、直近の1年間、返済に遅延のないこと。
- 次のいずれも満たすこと。
- 最近2期の決算期において減価償却前売上高経常利益が連続して赤字でないこと。
- 直近の決算期において債務超過でないこと。
- 法人から代表者への貸付金・仮払金等がないこと等。
代表者保証を外すには、日本政策金融公庫との融資取引が1年以上あることが必須でした。
つまり創業から2期以上経過してはじめて日本政策金融公庫から融資を受ける場合には、必ず代表者保証が付くことになっていました。
現在の経営者保証免除特例制度
その後、2022年4月7日現在は下記のように変更されています。
次の1から4までのいずれかの要件を満たしており、経営状況等から借入返済が可能と見込まれる法人の方
- 次の(1)から(3)までの全ての要件を満たす方。ただし、物的担保の提供をいただく場合は(1)の要件のみ満たしていればご利用いただけます。 (1)法人と代表者の方の一体性の解消が一定程度図られていることについて、公庫において確認ができること。 (2)税務申告を2期以上実施していること。また、公庫からの普通貸付又は生活衛生貸付の借入がある場合は、取引状況に問題がないこと。 (3)財務状況に問題がないこと。
- 取引金融機関において代表者保証の免除に関する協調対応が見込める方または取引金融機関から代表者保証を免除された借入の残高のある方
- 事業承継・集約・活性化支援資金を適用してご融資を受けられる方
- 生活衛生事業承継・集約・活性化支援資金を適用してご融資を受けられる方
ただし審査の結果、経営者保証免除特例制度を利用できない場合もあります。
大きな変更点
経営者保証免除特例制度の制度変更に伴う大きな変更点は、「日本政策金融公庫との融資取引が1年以上」という要件の廃止です。
これまでに日本政策金融公庫との取引がなくても、上記条件を満たせば経営者保証免除特例制度が利用できるようになりました。
経営者保証免除特例制度の現在の適用条件
上記の変更点を踏まえて整理しますと、次のケースによって2通りの適用要件があります。
- 新型コロナウイルス感染症特別貸付以外の場合
- 新型コロナウイルス感染症特別貸付に該当する場合
1. 新型コロナウイルス感染症特別貸付以外の場合
新型コロナウイルス感染症特別貸付(いわゆるコロナ融資)でない通常の融資制度を使う場合、次の3つの要件を満たすことが必要です。
- 最近2期の決算期において減価償却前売上高経常利益が連続して赤字でないこと
- 直近の決算期において債務超過でないこと
- 法人と代表者の方の一体性の解消が一定程度図られていること
「法人と代表者の方の一体性の解消が一定程度図られていること」とは、法人から代表者への貸付金・仮払金等がない・または少ない(100万円未満)ということを意味しています。
新型コロナウイルス感染症特別貸付以外の場合の経営者保証免除特例の要件をシンプルに言い換えると、次の通りです。
- [経常利益+減価償却費]が2期連続赤字でない
- 直近の決算で債務超過でない
- 直近の決算で法人から代表者への貸付金がない
なお、代表者から法人への貸付金は、経営者保証免除特例制度においては問題になりません。
2. 新型コロナウイルス感染症特別貸付に該当する場合
新型コロナウイルス感染症特別貸付(いわゆるコロナ融資)で経営者保証免除特例制度を利用する場合は、次の2つの要件を満たすことが必要です。
- 直近の決算期において債務超過でないこと。
- 法人と代表者の方の一体性の解消が一定程度図られていること
新型コロナウイルス感染症特別貸付の場合の経営者保証免除特例の要件をシンプルに言い換えると、次の通りです。
- 直近の決算で債務超過でない
- 直近の決算で法人から代表者への貸付金がない
コロナ融資の場合「2期連続赤字でない」という要件が必要ありません。
経営者保証免除特例制度のデメリット
経営者保証免除特例制度のデメリットは、適用する融資制度の利率に0.2%が上乗せされることです。
ただし、事業承継・集約・活性化支援資金(企業活力強化貸付)もしくは生活衛生事業承継・集約・活性化支援資金を適用してご融資を受けられる方、十分な物的担保を提供される場合は利率の上乗せはありません。
経営者保証免除特例制度に関するよくある質問
経営者保証免除特例制度に関するよくある質問と答えを用意しました。
Q. 経営者保証免除特例制度を利用するデメリットは何ですか?
A. 経営者保証免除特例制度を利用すると、融資制度の利率に0.2%が上乗せされます。詳しくは「経営者保証免除特例制度のデメリット」で説明しています。
Q. 経営者保証免除特例制度はコロナ融資でも利用できますか?
A. コロナ融資(新型コロナウイルス感染症特別貸付)でも経営者保証免除特例制度を利用できます。利用するための要件は、直近の決算「債務超過がないこと」と「法人から代表者への貸付金がないこと」です。詳しくは「2. 新型コロナウイルス感染症特別貸付に該当する場合」で説明しています。
Q. 経営者保証免除特例制度は個人事業主でも利用できますか?
A. 経営者保証免除特例制度は基本的に法人が利用できる制度です。経営者保証免除特例制度の対象については「現在の経営者保証免除特例制度」を参照ください。
Q. 「法人代表者の方の連帯保証を不要とする制度の利用」とは何ですか?
A. 日本政策金融公庫から融資を受ける際に、経営者保証免除特例制度を利用することです。経営者保証免除特例制度の概要は「経営者保証免除特例制度とは」で説明しています。
経営者保証免除特例制度のまとめ
公庫の経営者保証免除特例制度は、公庫の融資において、一定の条件を満たすことで経営者個人の連帯保証を外すことができる制度です。
新型コロナウイルス感染症特別貸付以外の場合の要件は次の通りでした。
- [経常利益+減価償却費]が2期連続赤字でない
- 直近の決算で債務超過でない
- 直近の決算で法人から代表者への貸付金がない
新型コロナウイルス感染症特別貸付の場合の要件は次の通りでした。
- 直近の決算で債務超過でない
- 直近の決算で法人から代表者への貸付金がない
事業を継続する限り、融資は一度で終わりではありません。
スタートアップや中小企業は同一金融機関からの借り換えを繰り返しながら資金繰りを行うことが一般的で、それは日本政策金融公庫も同じです。
借り換えの際、上記の条件を満たすことで、既存の借入残高分も含めて、経営者保証を外すことができます。
ぜひ借換の際に、経営者保証を外し、経営者の心理的負担を軽減しながら事業に邁進いただければと願っています。
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