若林 哲平
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東京都独自の創業支援施策、創業サポート事業をご存知でしょうか?
正確には「女性・若者・シニア創業サポート事業」という、東京都限定の新しい融資制度です。2014年5月に発表された新しい創業融資制度です。
東京都の女性、若者(39歳以下)、シニアの社会起業家は必見です。
創業者が選択できる融資制度
これまで創業者が選択できる融資制度は、主に次の4択でした。
- 日本政策金融公庫の新創業融資
- 日本政策金融公庫の経営力強化資金
- 都道府県の制度融資
- 区市町村の融資あっせん
そこに風穴を開けたのが東京都の「女性・若者・シニア創業サポート事業」です。
創業サポート事業の概要
創業サポート事業の対象者
- 代表者が女性、若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)で、
- これから創業、または創業後5年未満で
- 東京都内に本店を置き、
- 地域の需要や雇用を支える事業であること
個人事業主でも法人でもOK。NPO法人や一般社団法人も対象です。
当初は創業から1年未満でしたが、5年未満まで拡大されました。
(2017-06-12時点)
創業サポート事業の融資条件
- 1,500万円以内(運転資金のみは750万円以内)
- 固定金利1%以内
- 無担保無保証
- 返済期間10年以内
- 据置期間3年以内
- 自己資金要件なし
当初の上限は1,000万円でしたが、1,500万円まで拡大されました。
(2017-06-12時点)
創業サポート事業の仕組み・流れ
創業サポート事業は、下記のような仕組みで実行されます。
地域創業アドバイザーのアドバイスを受けて取り組むことが特長です。
(女性・若者・シニア創業サポート事業HPより抜粋)
流れとしては、次の通りです。
- 地域創業アドバイザーが主催するセミナーを受講(省略可)
- 地域創業アドバイザーまたは信金・信組に相談
- 地域創業アドバイザーからアドバイスを受けて事業計画をブラッシュアップ
- 信金・信組に正式に申込
- 信金・信組で審査
- 信金・信組から融資実行
融資実行までの期間は金融機関によってかなりバラつきがあります。
上記2〜6まで、早いところで1ヶ月弱、遅いところで2ヶ月以上かかった例も。
創業サポート事業のいいところ
融資のサポートの実務をする者として、創業サポート事業が他の融資制度に比べて優れていると感じるのは次の点です。
無担保無保証で自己資金要件がない
他の融資制度では、自己資金要件があることが一般的です。
しかし、創業サポート事業では自己資金の要件がありません(※1)。
金利1%以内
金利の上限が1%と決まっています。ですのでどの金融機関でも金利は実質的に1%となります。
これは起業家にとっては非常にありがたい金利です。
なお、自己資金がなくても申込はできますが、審査上は不利です。自己資金の蓄積がなければ、申し込み金額は少なくせざるを得ないということは覚悟した方がよろしいかと思います。
据置期間が最大3年
据置期間とは、元金の返済を待ってくれる期間です。その間は金利の支払いのみでOKです。
制度上最大3年とはなっていますが、実務上は最大12ヶ月かと思われます。
それでも開発期間がどうしても必要で、売上が立つまでに時間のかかるWEBサービス事業者等にとっては非常にありがたい据置期間です。
運転資金も返済期間10年
融資は資金の使いみちにより、運転資金と設備資金とに分かれて実行されることが多く、運転資金は7年以内、設備資金は10年前後の返済期間になることが一般的です。
しかし、創業サポート事業では、制度上運転資金も10年返済にすることができます。
この点も起業家にとって非常にありがたいところです。
創業助成事業とのリンクも
東京都の創業活性化特別支援事業のうち、創業助成事業という上限額300万円の補助金があります。
この創業助成事業では、東京都の制度融資や創業サポート事業での融資が実行されていることが、申請要件になっています。
創業サポート事業の注意点
創業サポート事業は、東京都が融資原資を信用金庫・信用組合に預託し、他の融資制度より、有利な条件での創業者に融資することを目的としています。
ですので、上記の点で非常に制度上は優れています。
しかし、一方で金融機関によって取扱にバラつきがあり、不確実性が高いと感じることもあります。
必ずしも上記メリットがすべて叶えられるとは限りませんので注意が必要です。
金融機関の選択
創業者にとっては非常にありがたい一方、信金・信組サイドにとっては微妙な部分もあります。
デフォルトした債務の半分は東京都が被ってくれるので、金融機関にとってリスクが低い制度ではありますが、儲けである金利は低く、担当者としても慣れている信用保証協会の保証付き融資の方がやりやすいので、積極的になれない側面があります。
創業サポート事業の申込を希望しても、保証付き融資を勧めてくる金融機関もあります。
東京都からの予算を使い切ってしまい、受け付けができない金融機関もあります。
金融機関の選択、というがひとつポイントです。
本部決済
ほとんどの金融機関が、支店ではなく本部決済となります。
そのため、支店レベルでは融資の見込みが立ちにくく、出してみないとわからなかったり、時間がかかったりすることもあります。
資金が必要なタイミングから、大幅な余裕をもって申し込むことをお勧めします。
事業計画書が非常に重要
自己資金要件がないので、他の制度では難しい方でも、申込自体は可能ですが、その分、事業計画書の内容が非常に重要となります。
アドバイザーへ相談する中で事業計画のブラッシュアップを手伝ってはもらえますが、回数を重ねれば時間がかかりますし、事業成功の可能性が低いと判断されれば、申込打ち切りもあるようですので、相談前にきっちり固めておく必要はあります。事業計画書の設問項目も多く、地域性や雇用創出など、押さえなければならないポイントもありますので、事業計画書作成にあたっては注意が必要です。
まとめ
条件は限られていますが、該当する方にとってはこの上なく好条件の融資制度です。
一方で融資の不確実性をカバーするために、確実性の高い日本政策金融公庫の新創業融資などと組み合わせて使うという高等テクニックもあります。
東京都内で創業を計画、または創業から1年以内の助成、若者(39歳以下)、シニアの方はぜひご検討下さい!