若林 哲平
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創業融資を検討するとき、「どの金融機関に相談すればいいのか」という疑問は多くの起業家が抱えます。日本政策金融公庫(公庫)の次のステップとして保証協会付き融資を狙う場合、金融機関選びが融資の成否を大きく左右します。
この記事では、信用保証協会・中小企業庁の実績データをもとにINQが独自集計した金融機関ランキングと、融資に積極的な銀行を見分けるための具体的な指標を解説します。
目次
- 創業融資における金融機関の役割
- 創業融資に積極的な金融機関ランキング
- メガバンクがランク圏外になる理由
- 融資に積極的な銀行を見分ける2つの指標
- 自社の状況別・金融機関の選び方
- まとめ:金融機関選びの3ステップ
1. 創業融資における金融機関の役割
創業融資のルートは大きく2つです。
- 日本政策金融公庫(公庫):政府系金融機関。創業直後でも単独で申し込める
- 信用保証協会付き融資:民間金融機関(銀行・信用金庫など)+信用保証協会がセットで融資を保証する仕組み
保証協会付き融資では、信用保証協会が審査を行い、実際に融資を実行するのは民間の金融機関です。つまり、どの金融機関の窓口を選ぶかで、審査のスピードや柔軟性、融資後のサポートが大きく変わります。
2. 創業融資に積極的な金融機関ランキング
信用保証協会の実績データ(令和2〜6年度)をもとにINQが独自集計したところ、創業融資の件数上位には信用金庫が複数ランクインする結果となりました。
注目すべき傾向
- 多摩信用金庫が3年連続でトップクラスの実績
- 埼玉縣信用金庫が数年前から創業融資強化のための体制や支援メニュー拡張で急速に実績を伸ばし上位に浮上
- 地域密着型の信用金庫・信用組合が上位を占める傾向
この結果には理由があります。信用金庫は地域の中小企業・個人事業主を主な顧客とする協同組織金融機関であり、創業期の小口融資や事業性評価に慣れているためです。
※参考:創業融資に積極的な金融機関ランキング(R2年度〜R6年度)
出典:中小企業庁ホームページ「信用保証協会保証承諾実績(令和2年度〜令和6年度)」を元に作成 (https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/s…)
3. メガバンクがランク圏外になる理由
「メガバンクに相談したのに断られた」という声はよく聞かれます。これはメガバンクの姿勢の問題ではなく、ビジネスモデルの構造的な違いによるものです。
メガバンクが創業融資に積極的でない理由
① ターゲット顧客の違い メガバンクは大企業・上場企業向けの大口融資が主なビジネスです。数百万〜数千万円規模の創業融資は、業務コストに対してリターンが合いにくい。
② リスク許容度の違い 実績のない創業期企業への無担保融資は、メガバンクの審査基準では通りにくい案件が多い。信用金庫は地域貢献の使命もあり、相対的にリスクテイクしやすい。
③ 担当者の専門性の違い 信用金庫の担当者は中小企業・創業期融資の経験が豊富なケースが多く、事業計画の読み方や定性評価に慣れています。
4. 融資に積極的な銀行を見分けるアプローチ:2つの指標
金融機関の公開データから、プロパー融資(保証なし・独自審査の融資)に積極的かどうかを読み解く指標が2つあります。
① 預貸率
預金残高に対してどれだけ融資を行っているかを示す比率で、金融機関が資金をどの程度「貸し出しに回しているか」を表します。預貸率が高い金融機関ほど、融資に積極的なスタンスを持っている傾向があります。
② 経常利益率
こちらは、プロパー融資の可能性を読み解くうえで特に重要な指標です。経常利益率が低い金融機関は、リスクの高い融資(プロパー融資など)を行った際に発生する引当金が利益を圧迫するため、引当金負担の小さい保証協会付き融資を優先しがちです。逆に、経常利益率が高い金融機関ほど、プロパー融資にも対応できる体力があると読むことができます。
これらの2指標は、スタートアップのシード・プレシード段階だけでなく、ミドル〜レイター期に「保証協会の枠が尽きた後も付き合い続けてくれる金融機関かどうか」を見極める際にも有効な判断材料となります。
これらの数値は、前述した創業融資に積極的な金融機関同様、各金融機関の公開データから確認し得るため、融資先の金融機関を選ぶ際の参考にしておきたいポイントです。
※参考:創業融資に積極的な金融機関ランキング(R2年度〜R6年度)
5. 自社の状況別・金融機関の選び方
ケース①:創業直後・VCからの出資なし
→ ランキング上位の金融機関で最寄りの信用金庫・信用組合へ
地域密着型で創業融資の経験が豊富。保証協会付き融資での実績を積み上げ、将来のプロパー融資につなげる土台を作る。
ポイントは「制度に積極的な金融機関」を探すこと。同じ保証協会の制度でも、取り組み件数の多い金融機関とそうでない機関では審査のスムーズさが全然違います。業界のネットワーク(士業・支援機関・INQのような専門家)経由で情報を得るのが効率的です。
ケース②:VCから出資を受けているスタートアップ
→ ランキング上位の最寄り機関で創業融資実績を作りつつ、メガバンクとも早期から接点を持つ
VCバックのスタートアップの場合、将来的にシリーズA以降でメガバンクのプロパー融資やシンジケートローンを活用するケースがあります。その際、まったく取引実績がない状態からのアプローチは難しい。
早期から担当者に会い、自社の事業と成長計画を知ってもらう関係構築を進めておくことが重要です。「今すぐ借りる」ではなく「将来のパートナーを開拓する」感覚で動くのがポイントです。
ケース③:プロパー融資を見据え、保証協会枠を使う
→ 地方銀行のプロパー融資を検討
プロパー融資への移行を視野に入れ、保証協会の保証枠(通常:無担保保証枠 8,000万円)を使い、返済実績を重ねながら、先述の貸出額が大きく、経常利益率が高い金融機関へアプローチする。
6. まとめ:金融機関選びの3ステップ
STEP 1:自社の状況を整理する 創業直後か、VCバックか、すでに融資実績があるか。状況によって最適な金融機関の種類が変わります。
STEP 2:地域と制度に積極的な金融機関をリストアップする 創業融資の件数実績が多い信用金庫・信用組合をターゲットに。スタートアップ業界のネットワークや専門家経由の情報は、実務や温度感ある情報として精度が高い。
STEP 3:担当者と早期に接点を持つ 融資の可否は担当者・支店との関係性にも左右されます。「借りたいとき」ではなく「まだ借りなくていい時期」から顔を出し、事業を知ってもらうことが後の審査をスムーズにします。
金融機関選びは「どこでも同じ」ではありません。自社のフェーズと調達戦略に合った機関を選ぶことが、創業融資成功の第一歩です。
具体的な金融機関の選び方や融資戦略については、INQの無料相談でも承っています。
この記事で参照したPodcastエピソード:
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