お問い合わせ

融資を通す事業計画書の書き方|金融機関が評価する3つのポイントとVC向けとの決定的な違い

創業融資 融資を通す事業計画書の書き方|金融機関が評価する3つのポイントとVC向けとの決定的な違い
The following two tabs change content below.

若林 哲平

株式会社INQ代表取締役CEO、行政書士法人INQ代表。 様々な領域のスタートアップの融資による資金調達(デットファイナンス)を支援。年間130件超10億以上の調達を支援するチームを統括。行政書士/認定支援機関。複数のスタートアップの社外CFOも務め、業界への理解が深く、デットだけでなくエクイティ両面の調達に明るく、対応がスムーズだとVCやエンジェル投資家からの信頼も厚い。趣味はキャンプと音楽。4児の父。

「VCに出した事業計画書をそのまま金融機関に提出したら断られた」——これは、INQに相談にくる起業家から繰り返し聞く話です。

融資審査における事業計画書は、VC向けのものとは目的も構成も評価基準もまったく異なります。正しい形式で作れているかどうかが、審査通過率に影響します。

この記事では、累計1,300件・130億円超の融資支援実績を持つINQが、金融機関に評価される事業計画書の書き方を体系的に解説します。


目次

  1. そもそも事業計画書はなぜ必要か?
  2. VC向けと金融機関向けの決定的な違い
  3. 金融機関が審査で見ている3つのポイント
  4. 高評価を受けやすい事業計画書の構成要素
  5. 数字計画の立て方:「積み上げ派」と「逆算派」
  6. やりがちなNGパターン
  7. まとめ:事業計画書作成の手順

1. そもそも事業計画書はなぜ必要か?

事業計画書は「融資のために提出する書類」と思われがちですが、本来の役割はそれだけではありません。事業計画書には大きく5つの役割があります。

  1. 経営の羅針盤:自社の目指す方向と実現ステップを可視化する地図
  2. 意思決定の基準:判断に迷ったときに立ち返る軸
  3. 社内の共通言語:チームメンバーが同じ方向を向くためのコミュニケーションツール
  4. 社外への説明ツール:投資家・金融機関・パートナー企業に協力を求めるための材料
  5. 進捗管理の基準:計画と実績を比較して軌道修正する指標

融資審査の文脈では「社外への説明ツール」としての役割が問われますが、内容の説得力は経営者自身がどこまで事業を解像度高く理解しているかに直結します。 日ごろから事業計画を経営の羅針盤として使っている経営者の計画書は、審査の場でも自然と厚みが出ます。


2. VC向けと金融機関向けの決定的な違い

ここが最も重要なポイントです。同じ「事業計画書」でも、VCと金融機関では求めているものがまったく異なります。それは、双方のビジネスモデルを鑑みてみると、理解が深まると思います。

ビジネスモデルの違いから生まれる評価軸のズレ

VC(エクイティ)金融機関(デット)
リターンの源泉株式価値の上昇(キャピタルゲイン)利子収入+元本回収
求める成長性10〜100倍のアップサイド安定した返済キャッシュフロー
リスク許容度高い(数社が大化けすればいい)低い(返済されることが前提)
評価の重点市場規模・成長率・チームの能力返済原資・実現可能性・経営者の信頼性

VCに出した計画書をそのまま提出してはいけない理由

上記の違いから、VCの方に好まれやすい計画書は「ビジョン」「TAM(巨大市場規模)」「急成長のカーブ」が描かれたものになりやすいです。しかし金融機関の担当者がこれを見ると、「この返済計画は本当に実現できるのか?」という疑問が先に立ちます。

日本政策金融公庫のスタンスを例に取ると、公庫の原則は「返済できる見込みのある企業に融資する」です。つまり、どれだけ夢のある計画でも、返済原資(利益)が計画の中にどう積み上がるかが見えない計画書は評価されません。


3. 金融機関が審査で見ている3つのポイント

これまでのご支援事例から、金融機関の審査担当者が特に重視する評価軸は以下の3つと捉えています。

① 実現可能性

「この計画は本当に達成できるか?」が最重視される項目です。

評価が高い計画書に共通するのは、根拠のある数字が積み上がっていることです。「市場が大きいから伸びる」ではなく、「既存顧客のリピート率がX%で、月にY件の新規顧客を獲得できる見込みがある理由はZ」という具体的な論拠が必要です。

注意点: 実現性の低い計画は「次回の信頼性」も損ないます。計画を大幅に下回った実績があると、次の融資申請時の審査にも影響します。計画以上の成長は問題ありませんが、計画を下回ることへの金融機関の目は厳しい。

② 収益性と返済原資の見通し

金融機関が最終的に確認するのは「毎月の返済額をキャッシュフローで賄えるか」です。

売上計画だけでなく、利益(返済原資)がいつから・どの程度発生するかが計画に明記されている必要があります。特に創業期で赤字が続く場合、「いつから黒字化するか」「その根拠は何か」を明確に示すことが重要です。

③ 経営者の経験・資質

創業融資では財務実績がないため、「この経営者は事業を成功させられる人物か」という定性評価の比重が高くなります。

特に重視される「斯業(しぎょう)経験」とは、今から始める事業と直接関連する業界・職種での実務経験のことです。まったく未経験の領域で起業するよりも、「前職10年で業界を熟知しており、課題を肌で知っているから起業した」という文脈が審査では強い。


4. 高評価を受けやすい事業計画書の構成要素

日本政策金融公庫の創業計画書を例に、各項目で高評価を得るためのポイントを解説します。

創業の動機・背景

単なる「やりたいこと」ではなく、業界の課題と自分の経験を結びつけた必然性を書く。「なぜ自分がやるのか」「なぜ今なのか」が伝わると評価が上がります。

経営者の略歴

職務経験を羅列するだけでなく、今回の事業との関連性を明示する。金融機関担当者は「この人はこの事業で成功できる背景があるか」という視点で読んでいます。

取扱商品・サービスの説明

専門用語を避け、担当者が上司(稟議の決裁者)に説明できるレベルの平易な言葉で書く。図や図解を別紙で添付すると理解度が上がります。

「別紙参照」の活用: 記入欄が小さい書類では、詳細を別紙にまとめて「詳細は別紙参照」と記載する方法が有効です。欄の大きさに引きずられて情報を削るより、別紙で補足する方が断然評価されます。

販売先・仕入先・外注先

すでに見込み顧客やパートナーがいる場合は具体的に記載する。「ゼロから開拓する」よりも「既存のネットワークから〇社の見込みがある」という方が実現可能性の評価が高まります。

必要な資金と調達方法

自己資金と融資額の比率が重要です。一般的に自己資金が多いほど審査は有利です。また、「何に使うか(資金使途)」を明確にすることも必須です(設備投資か、運転資金か、採用費か)。


5. 数字計画の立て方:「積み上げ派」と「逆算派」

売上計画の立て方には大きく2つのアプローチがあります。

逆算派(VC向けに多い)

「3年後に10億円の売上を達成する」というゴールから逆算して、各年の数字を設定する方法。

積み上げ派(融資向けに適している)

現在の実績・顧客数・受注見込みを起点に、合理的な成長率で積み上げる方法。

融資審査では積み上げ派が有利です。

理由は、積み上げ型の計画は「なぜその数字になるか」の根拠が示しやすいためです。「月10件の新規顧客×単価50万円×12ヶ月=6,000万円」という計算式は、担当者が稟議書に転記しやすく、決裁者も納得しやすい。

売上を「分解」して書く

売上計画は単純に「〇億円」と書くのではなく、係数となる項目やKPIに分解して示します。

  • 単価×量:客単価×顧客数
  • 継続率×新規獲得:既存顧客の継続率+新規顧客の月次獲得数
  • 案件数×受注率:商談数×受注率×平均案件額

この分解が示されると、担当者は「この数字は現実的か」を検証しやすくなり、信頼性が上がります。


6. やりがちなNGパターン

NG① VC向けの計画書をそのまま提出する

前述の通り、評価軸が根本的に異なります。必ず金融機関向けに組み直す。

NG② 経営者が数字を把握していない

面談で担当者から「この数字の根拠は?」と聞かれたときに答えられないのは致命的です。計画書は作成者(士業の専門家や支援者)ではなく、経営者自身が説明できるレベルまで理解していることが前提。

NG③ 過大な売上計画を書く

「大きく書けば多く借りられる」という発想は逆効果です。実現性の低い計画は審査担当者の信頼を失い、その後の取引関係にも影響します。

NG④ 資金使途が曖昧

「運転資金として」だけでは不十分です。「採用3名分の人件費6ヶ月分:〇〇円」「システム開発費:〇〇円」という具体的な内訳が必要です。


7. まとめ:事業計画書作成の3ステップ

STEP 1:構想・構造・数字の順に考える

いきなり数字から入らず、まず「何をやるか(構想)」→「どんな仕組みで稼ぐか(構造)」→「どれだけ稼ぐか(数字)」の順序で整理する。

STEP 2:返済原資から逆算して数字を設計する

月次の返済額を先に確認し、その返済が賄える利益が生まれる時期・規模を計画の中心に置く。

STEP 3:担当者が稟議書に転記できる形にする

金融機関の審査は担当者が稟議書を書き、上位決裁者を通す仕組みです。担当者が「この会社は大丈夫」と上司を説得しやすい材料を揃えることが、審査通過の近道です。


事業計画書の質は、融資額・条件・スピードに直接影響します。「書き方がわからない」「金融機関向けに直したい」という場合は、INQの無料相談でも承っています。


この記事で参照したPodcastエピソード:

より詳しい解説はPodcastでお聴きいただけます。

カテゴリの最新記事

▶いくら借りれるか診断 専門家に無料相談