若林 哲平
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資金繰りが悪化したときに使える制度として、日本政策金融公庫のセーフティネット貸付があります。
通常の融資制度とは異なり、「社会的な環境の変化にさらされ、一時的に業績が苦しくなった場合」などの特定の条件下で扱われる制度です。
スタートアップの融資支援を累計500件以上行なっているINQでも、無料相談で「セーフティネット貸付はどのタイミングで使えますか?」というご相談をよくいただきます。
本記事では、コロナ融資、セーフティネット保証との比較も交えて、公庫のセーフティネット貸付を詳しく解説をしていきます。
この記事を読んで分かること
・セーフティネット貸付の制度内容
・コロナ融資、セーフティネット保証との違い
セーフティネット貸付とは?
セーフティネット貸付とは、新型コロナウイルスの影響を受けた事業者向けの特別融資(いわゆる「コロナ融資」)との比較でしばしば頻出する制度です。
セーフティネット貸付は、新型コロナウイルス感染症をはじめとする社会的・経済的環境の変化などにより、一時的に業況が悪化している事業者の経営基盤の強化を図ることを目的とした制度です。
コロナの影響を受けた事業者の救済的措置という点ではコロナ融資と同じですが、コロナ融資がコロナの影響による売上の減少を申込条件にしているのに対して、セーフティネット貸付は売上の減少が申込条件ではないのが特徴です。
制度概要
融資制度の概要は下表のとおりです。
融資限度額:
4800万円(国民事業)
7.2億円(中小事業)
貸付期間:
設備資金15年以内(うち据置期間は3年以内)
運転資金8年以内(うち据置期間は3年以内)
金利:
基準金利
1.91% (国民事業) 1.11%(中小事業)
セーフティネット貸付のメリット・デメリット
メリット
前記の通り、売上の減少がなくても、「社会的な要因による一時的な業況悪化により資金繰りに著しい支障を来している、または来すおそれのある」場合に使うことができるのがメリットです。
他のコロナ融資は、前年比その他の比較方法により、直近1ヶ月の売上高が一定割合(5〜20%)以上減少していることが申し込みの要件となっています。しかし、セーフティネット貸付はコロナの影響により、資金繰りに影響を来す恐れがある、だけで申し込み可能です。
コロナの影響を受けて売上の伸びは想定より鈍化しているものの、前年比や2019年10〜12月等との比較では売上が伸びている事業者等でも対象となります。
デメリット
一方、売上の減少が明らかでないということは、売上の減少がある事業者よりコロナの影響が少ないともいえるため、コロナ融資に適用される以下の金利等の優遇が適用されない、ということがデメリットとなります。
- 特別利子補給制度(一定の条件化で当初3年間の金利が実質0%)
- 貸付期間を長期にしやすい
- 据置期間を長期にしやすい
- 一般の融資枠とは別枠の扱いになる
以上のメリット・デメリットから、もしコロナ融資の申込条件に当てはまるのであれば、やはりコロナ融資を使っていただいた方がいいです。
しかし、今後資金繰りに著しい支障を来すおそれがある場合には、もしコロナ融資の申込条件を満たさないとしても、実際に資金繰りに支障を来たす前に、セーフティネット貸付を使って、早めに資金調達をして手元現金を確保しておくべきと考えます。
セーフティネット保証との違いは?
セーフティネット保証とは?
災害等により大規模な経済危機等により、経営の安定に支障を来している事業者に対しての融資に、信用保証協会が特別な保証を行う公的な制度です。
セーフティネット保証は、常に使えるわけではなく、経営の安定に支障を来たす事象が発生した緊急時にのみ発動します。
セーフティネット保証とセーフティネット貸付の違いとは?
今回、新型コロナウイルス感染症による経済危機によってセーフティネット保証4号・5号が発動しています。一方、日本政策金融公庫のセーフティネット貸付は緊急時に関わらず常時実施されている制度です。
また、セーフティネット保証は民間金融機関の融資(貸付)に対する信用保証協会の保証ですが、セーフティネット貸付は公庫による融資(貸付)です。
セーフティネット保証は、売上の減少等の申込条件を満たす場合に使うことができ、一般枠とは別枠の扱いであったり、一定の条件を満たせば当初3年間実質無利子になったりと、特別な条件で融資及び保証を受けることができます。
一方、公庫のセーフティネット貸付は、売上高の減少幅に関係なく利用できますが、基本的には通常時と同じ基準金利の適用となり、平常時と同じ融資枠の扱いとなります。
諸条件比較表
セーフティネット貸付 | 新型コロナウイルス感染症特別貸付 | セーフティネット保証 | |
---|---|---|---|
金利 | 基準金利 | 基準金利 | 無金利 |
返済期間 | 設備資金15年以内 運転資金8年以内 | 設備資金 20年以 運転資金 15年以内 | 10年以内 |
据置期間 | 3年以内 | 10年以内 | 1年以内 |
ポイント比較表
セーフティネット貸付 | 新型コロナウイルス感染症特別貸付 | セーフティネット保証 | |
---|---|---|---|
使えるタイミング | 常時実施 | 緊急時のみ発動 | 緊急時のみ発動 |
実施金融機関 | 日本政策金融公庫 | 日本政策金融公庫 | 信用保証協会 |
利用条件 | 売上高の減少幅に関係なく利用可能 | 直近1ヶ月の売上高が一定割合(5%)以上減少していること | 5%〜20%以上の売上高の減少幅あり |
セーフティネット貸付か、コロナ融資か…
コロナ融資の申込条件に当てはまる程コロナのダメージが明らかになるまで待ってから好条件のコロナ融資に申し込むか、あるいは早めにセーフティネット貸付で手元資金を確保するか、非常に難しい経営判断かと思います。
INQでは年間130件超、累計500件超の融資のサポートを行っています。多くの事例から得た経験とノウハウにより、上記の問題についてもヒアリングの上、適切なアドバイスが可能です。
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