若林 哲平
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心ある方たちのお金だから、アクセルを踏める
小林:1日の中でも夢や希望から不安やネガティブのジェットコースターになることも日常茶飯事です。
でも、やっぱり毎日のようにNさんや大崎社長の顔が出てくるんですよ。
「今行け!!」って言ってくれるんです。
何のためにご出資頂いたのか。
投資家さんから託して頂いたのに、無駄遣いしちゃいけないからって突っ込めなかったら、多分そのままキャッシュの垂れ流しで終わる。
「ほんまにお前が踏もうと思うんだったら、(アクセルを)踏めや。出してまえ」って、多分、そう仰って頂いてると信じて。
だから今、本当に必要だよねとなったらバッと踏める。
めちゃめちゃ意外だったのが、自分のお金だったら踏めるのに、と思ってたんですよ。
でも逆に、そういう心ある方たちから託されたお金だからこそ、踏めるんです。
中国は、仕事や未来へのエネルギー量が凄い
白石:マーケットとしては最初からもう海外を見てらっしゃったんですか。
小林:最初から海外でしたね。ただ、中国じゃなかったです。
中国は全く分からなかったし、僕は10代の多くをカナダで過ごしたので、北米は行きたいよねとか。
あとはソフトバンク時代にヨーロッパとよくお仕事をさせて頂いていたので、ヨーロッパも行きたいねと思ってたんですけど。
そういう意味では中国は意外でした。
ただ、蓋を開けてみたら、中国マーケットや中国の方はめちゃくちゃ純粋で合理的で、しかも速い。
仕事とか自分たちの未来をつくっていくことに対して、エネルギー量が全然違う。
一緒に仕事をするようになって「ああ、本当に日本ってヤバいんだなって思うようになりました。」
でも結論として言うと、世界に出るためにもやっぱり日本で実績を積みたい。
日本のメディアやコンテンツってものすごい特殊じゃないですか、地上波の在り方も世界的にみると独特だし、コンテンツの作り方もユニークなものが多い。
白石:色んな癒着でややこしくなってるんでしょうか?
小林:ライツ周りの絡み方や大手広告代理店の関わり方、電波、コンテンツに関わる制限などもふくめ、日本は独特のものが多いとよく聞きます。
あとは新しいものに対してまずは斜めに見る国民性もあるし。最近では海外から逆輸入したほうがうまく行くケースも増えているみたいですよね。
ネット動画配信メディアが急速に進化している中国でも、やはり日本の特異な放送メディア文化や独特のコンテンツ文化には未だに、というか一層興味があるみたいです。
优酷网(Youku)ってご存知ありますか?
アリババグループであり、中国最大動画配信事業者の一つですが、その創始者であるグヨンジャンさんと上海でお話させて頂いたんですが、プレゼンの後に「確かに面白いし昔からそれこそBBCiとかNHKも、テレビでこれをDボタンを使ってやろうと思ってたけど、どこもうまく行かなかった。
だけど当時はこういう(スマホ)ものがなかったし、テレビの筐体で実現するのは難しかった。
でも、これだけストレスなく自然に情報に触れられるんだったら有りかもしれないね。」と。
「ただ、中国の動画配信事業は相当大規模になっているし、新しいからといってそう簡単に技術連携を説得するのは難しい。逆にもし、日本という、放送メディアやコンテンツが成熟した国で君が1個でも成功事例当てられたら、多分すぐ世界に行けるよ。そしたらすぐに連絡してくれ!」っていう話をしてくれて。
そういう意味では日本でとか、どこでとかあまり意識はしていないかもしれない。
白石:またそこも、すごくフラットですね。
小林:フラットですね。出る時には出るし。
小さい「ゼロイチ」をいっぱい作ろう
白石:今回は、創業2期目という超短期間で資金調達と海外進出を成功された事例としてお伺いさせて頂いたわけですが、最後に起業家の方へ、何かメッセージをお願いします。
小林:起業家の方へ。僕がですか?むしろ僕が教えていただきたいです(笑)。
強いて言うなら、例えばソフトバンク時代には、その分野(映像通信回線)の営業や新規プロジェクト企画に必要な技術についてはそれなりに自信はあったけれど、今開発していることや、結び付けていこうとしているウエブサービスなどについては全くと言っていいほど知識がなかったんですね。
そんな中で、平たく言うと「小さいゼロイチをいっぱい作っていく」っていうのが、結構肝になってくるなと思っていて。
大きいゼロイチって大変じゃないですか。
今までなかったものをいきなりマルっとこの世にプロデュースするみたいな、これだとすごい難しそうで始めてもいないのに勝手にめげそうになりますけど、例えば裏紙にまず書いてみることから始まり、それでゼロイチになって。そのイチをパワーポイントにするのも、またゼロイチになって。
それをとにかく誰かに相談しに行くっていうのも、ゼロイチ。
最終理想形にするには必要な構築要素が多面的にあったとして、それぞれのフィールドで活躍されている企業さんや担当者さんに聞きに行く。
そして、少しずつそれを作ってみてはスクラップの繰り返しでした。
取りあえずサービスとしてはまだないとしても、何かモックでいいからつくってみちゃおう。
モックをもっとレベル高い技術者に見せると、これはすごい面白いねっていう連鎖になって。
結局ゼロイチって、小っちゃいゼロイチがもうちょっと大きいゼロイチになって、他のゼロイチと結びついてもうちょっと大きいゼロイチになっての繰り返しが、多分大きなイチになっていく。
こんな感覚が今回の経験で実感としてありました。
会社員時代に、聞いたこともない外国の砂漠の真ん中で撮った映像を日本のテレビ局さんにライブ伝送するためにひたすら海外のキャリアや放送局に聞きまわっていた経験などは、今でもどこかで役立っているんだと思います。
もちろん、当時は通信キャリアの強靭な組織の後ろ盾があってのことですが…。
特に高度な技術力や経営経験などない僕みたいな人間でも、なにがあっても形にしたい、とか、だれかの役に立ちたい、とかいう漠然とした拘りさえあれば、あとは小さなゼロイチの積み重ねができれば結構いろんなことできちゃうのかなぁと思っています。
白石:小さいゼロイチですね。素晴らしい。今日は本当にありがとうございました。
小林:ありがとうございました。
取材後記
ユニークで気さくな小林社長とお話をしながら、TIGの技術が持つ素晴らしい可能性はもちろんのこと、素直で謙虚なお人柄が、エンジェル投資家の方や吉本興業の大崎社長のような大局観を持つ素晴らしい先人を惹きつける秘密だと感じました。
現在TIGは国内外の様々な分野に導入されてきています。
中京テレビとサムライインキュベートによる「ユーザー体験に革命を起こすコンテンツ産業におけるデバイスの未来」というコンテストでは、VoicyやCAMPFIRE、レイ・フロンティアさんなどと共に最終5社に採択。今後は中京テレビの地上波とタイアップしたTIG実験配信なども実施されていくとのことで私たちの生活でもどんどんTIGが浸透していくことになるでしょう。
行政書士法人INQは、これからも株式会社パロニム 小林社長を応援していきたいと思います!