創業融資のスペシャリスト INQ
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「事業計画書ってなにから始めればいいの?」 「事業計画書の正しい書き方が分からない」 「失敗しないために事業計画書のポイントを知りたい」
事業計画書は、創業融資を受けるために必要な書類の1つです。
スタートアップの融資支援を行なっているINQにも「事業計画書の書き方について詳しく知りたい」というご相談をよくいただきます。
この記事はスタートアップの創業融資を累計500件以上支援してきた認定支援機関のINQが、これから起業する方や創業融資を受ける方向けに、事業計画書の書き方を各項目ごとに解説しています。
- 1. 事業計画書とは
- 2. 事業計画書の書き方で意識すべきポイント
- 3. 事業計画書の全体像と重要なポイント
- 4. 【項目別】事業計画書の書き方と記入例
- 4.1. 1. 創業の動機
- 4.2. 1.「創業の動機」のポイント
- 4.3. 2. 経営者の略歴等
- 4.4. 2.「経営者の略歴」のポイント
- 4.5. 法人成りの場合の注意点
- 4.6. 知的財産権
- 4.7. 3. 取扱商品・サービス
- 4.8. 3-2.「セールスポイント」のポイント
- 4.9. 3-3.「販売ターゲット・販売策略」のポイント
- 4.10. 3-4.「競合・市場など起業を取り巻く状況」のポイント
- 4.11. 4.取引先・取引関係等
- 4.12. 4-1.「販売先」のポイント
- 4.13. B to B(対企業の取引)
- 4.14. B to C(対個人の取引)
- 4.15. 4-2.「仕入先」のポイント
- 4.16. 4-3.「外注先」のポイント
- 4.17. 5.従業員
- 4.18. 6.お借入の状況
- 4.19. 6.「お借入の状況」のポイント
- 4.20. 7.必要な資金と調達方法
- 4.21. 設備資金
- 4.22. 運転資金
- 4.23. 自己資金
- 4.24. 他の金融機関等からの借入
- 4.25. 日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入
- 4.26. 8.事業の見通し(月平均)
- 4.27. 8.「事業の見通し」のポイント
- 4.28. 売上高
- 4.29. 売上原価(仕入高)
- 4.30. 経費
- 4.31. 利益
- 4.32. 9.自由記述欄
- 5. 事業計画書の書き方をチェックして創業融資を成功させよう
事業計画書とは
事業計画書とは、事業内容や戦略、収益の見込みなどをまとめた書類です。
銀行や公庫から融資を受けたり、資金調達をしたりする際に必要になります。
事業計画書については「事業計画書とは?ポイントを押さえて相手に響く書き方をチェック」で詳しく解説しています。
また、事業計画書が必要な理由については「今さら聞けない!事業計画書が必要な3つの理由」で解説していますので参考にしてください。
事業計画書と創業計画書の違い
日本政策金融公庫の新創業融資を申し込む場合の事業計画書は「創業計画書」と呼ばれています。
創業計画書のフォーマットは以下のページからダウンロードできます。
事業計画書が「どういう事業をしているか」を説明する書類であるのに対して、創業計画書は「どういう事業を始めたいか」を説明する書類であるという違いがあります。
書類を作成する時期にも以下のような違いが表れます。
- 事業計画書:起業後
- 創業計画書:起業前または起業後間もない時期
創業計画書については「創業計画書の書き方は審査に影響する?提出前に確認すべきポイント3選」で解説しています。
事業計画書の書き方で意識すべきポイント
事業計画書を書く際は、スタートアップの創業融資2大原則である、以下の2つのポイントを意識してください。
- 安定性と継続性を意識する
- 決裁権者を意識する
スタートアップの創業融資を成功させる2大原則については「【保存版】スタートアップの創業融資を成功させる、事業計画書の2大原則」で解説しています。
安定性と継続性を意識する
日本政策金融公庫は確実に事業が存続するか、安定性・継続性を重視します。
つまり、創業融資の事業計画書は堅実なプランが原則です。
「堅実なプラン」を具体的に言うのであれば、既に市場が存在している環境下で、持続的なビジネスモデルによって、継続的に着実な成長を狙う事業計画を指します。
VC・エンジェル投資家が評価するプランと逆の方向性になります。
VCに提出したピッチ資料そのままではマイナス評価に繋がることがあるので注意しましょう。
詳しくは「VCなのか?銀行なのか?スタートアップの事業計画書は出す先によって修正が必要!」で解説しています。
決裁権者を意識する
融資は担当者が稟議にかけ、上席(決裁有権者)が決裁します。上席は担当者より年齢が高く、保守的な傾向にあり、新しく前衛的過ぎるビジネスモデルは敬遠される場合があります。
誰が見てもわかる内容で書くことを意識してください。失敗例としては、下記のような内容が挙げられます。
- 専門用語や業界用語が多用されている
- ビジネスの商流が分かりにくい
- ボリュームが大きすぎて読まれない
誰が読んでも分かりやすいよう以下のような工夫をしましょう。
- 横文字は日本語に置き換える
- ビジネスモデルを図解した添付資料を用意する
- 金融機関所定のフォーマット+αのボリューム(5〜10ページ)に抑える
事業計画書の全体像と重要なポイント
事業計画書の全体像と重要なポイントについて解説します。
日本政策金融公庫の創業計画書のフォームには、以下の9項目が記載されています。
- 創業の動機
- 経営者の略歴等
- 取扱商品・サービス
- 取引先・取引関係等
- 従業員
- お借入の状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し
- 自由記述欄
日本政策金融公庫の創業融資の審査では「経験」「自己資金」「事業の見通し」**の3つが特に重要となります。
上記を日本政策金融公庫の創業計画書のフォームにあてはめると、以下のようになります。
- 経験:2.経営者の略歴等 創業する事業に関係のある経験を代表者及びチームとして有しているか
- 自己資金:7.必要な資金と調達方法 創業のために代表者自身がどれだけ準備してきたか、自己資金と借入のバランスが借入に偏りすぎていないか
- 事業の見通し:8.事業の見通し 売上をどのように上げていくのか、無理なく返済できるかどうか
これらの3項目については安全性を意識し、審査ポイントを押さえたうえでアピールできるように作成しましょう。
各項目の記載欄では足りない場合、別紙を添付することも大切です。
以降は項目ごとに詳しく説明していきます。
【項目別】事業計画書の書き方と記入例
事業計画書の書き方と記入例を項目別に解説します。
1. 創業の動機
ここは公庫担当者が1番最初に見る項目です。
担当者を惹きつけることを意識して、起業が突発的なものでなくしっかりと考え練られたものであることをアピールしましょう。
1.「創業の動機」のポイント
- 創業する事業の経験年数
- 自身の起業前の経験を生かせるビジネスであることを明記
- 思いつきで起業したのではなく、ビジネス的なきっかけと事業プランがあっての起業であることをアピール(エモーショナルな熱意を伝えても公庫担当者にはあまり響かないかもしれません)
- 公庫担当者に信頼されるよう堅実な理由・背景を記載
たった4行では起業に対する動機を書くのは難しいと思いますので、別紙にまとめていくこともテクニックの一つです。
また起業に対する思いや情熱は面談で伝えるか最後の自由記述欄に書きましょう。
例えば下記の記載例のようにポイントを意識して記載しましょう。
(記載例)
記載例の方は過去に同業種を7年経験しており、公庫の「経験十分」の評価である6年を超えています。
次ページの略歴でも記載しますが、敢えて経験を活かした事業であることをアピールすると公庫担当者に安心感を与えます。
プロトタイプまで作っていることも、「しっかりと創業の準備をしている」という評価に繋がります。
そして、多くの企業から引き合いを取ったことも今後の成長見込みを示す根拠となっています。
これらの点を総合すると「ビジネス的なきっかけを得て創業した」というアピールになるでしょう。
2. 経営者の略歴等
経営者となる創業者の経歴を時系列で簡潔に記入します。
2.「経営者の略歴」のポイント
- これから起業する事業に必要な能力等を、起業までの職務で培ってきたことをアピールしよう
- 「創業の動機」との整合性を意識しよう
- 「職務内容」は経験を示す上で重要!
1.創業の動機で記載した内容と一貫性があるかがポイントです。
公庫担当者はこれから起業する事業に必要な能力と経験があるかを重視します。
同業種の経験があるならば、経験がどの程度なのか、経営に関する知識を習得した経緯がわかるように書きましょう。
上記と同じ方の記載例を見てみましょう。この記載例は経歴の書き方として次の適切なポイントを押さえています。
- 最終学歴から記載する
- 学歴において事業に直結する研究を行っていることを記載する
- 事業に関連する職務を経験してきたことを示すべく職務内容も記載する
- マネージャーなど管理業務に従事してきたこと示すべく役職も記載する
このようなポイントを押さえることで、公庫担当者に「事業に関する経験値」をアピールできます。
法人成りの場合の注意点
同ケースでは、会社を作る前に個人事業主で開業しています。
事業内容を変えない個人事業からの「法人成り」なのか、全く別事業での「創業」なのかによって使用できる融資制度が異なるので、公庫担当者に適切な情報を与える必要があります。
また、過去に会社を創業したことがある場合は、現在会社が存続しているのか、代表取締役なのか取締役なのかを記載します。
代表取締役になっている場合は関連会社とみなされて決算状況などが評価の対象になりますので、注意が必要です。代表取締役を降りている場合は、取締役に降任したことをしっかりと記載したほうが良いでしょう。
法人成りについては「法人成りをした方がお得?個人事業主が法人成りするメリットとデメリット」で解説しています。
知的財産権
知的財産権は、産業財産権と著作権等に大きく分けられます。
産業財産権は、製品の発明やアイデアを保護するための特許、著作権は文字や音楽作品などを保護するために与えられるものです。
知的財産権等に当てはまるものがあれば、「有」の隣にチェックを入れて、申請中または登録済のどちらかにチェックを入れましょう。
3. 取扱商品・サービス
どのような商品やサービスで収益を上げるのか、創業融資を受ける事業概要を記入します。
3-1.「取扱商品・サービスの内容」のポイント
・専門用語・業界用語は避け、誰が見てもわかる商品・サービスの説明
・複数の事業ドメインがある場合には収益の立ちやすい事業を記載(新規性の高い自社事業より、堅い受託事業等を優先)
・売上げ見込みに説得性を持たせるため価格帯も記入
売上の中心となる商品やサービスは誰が見てもわかる書き方を意識しましょう。
専門用語や業界用語がわかる融資担当もいますが、決済権限を持っている役席者に伝わらなければ意味がありません。
また、出来るだけ先に売上が見込める事業ドメインを中心に事業計画を構成しましょう。
自社サービスのローンチや収益化のタイミングが先になる場合、その情報を正直に盛り込んでしまうと、融資の土台にすら乗らない可能性が高まります。
記載例を見てみましょう。3つの事業ドメインがあることがひと目で分かります。
売上の柱を明確にし、何も事業概要を知らない人がどのようなマネタイズをするのかが読んで分かるよう詳細を記載します。
飲食店の場合は、店舗の「場所」も事業の内容に絡む要素になりますので記載するようにしましょう。
3-2.「セールスポイント」のポイント
- 担当者に事業の安定性・継続性・確実性をアピールできるよう、商品・サービスの魅力を記載
- 競合他社との差別化についての記載し、業界や競合の理解が深いことをアピールしよう
ここでも重要なのは安定性と継続性です。
今までの内容との一貫性を意識した上で、事業が今後も確実に長く継続できるというアピールを盛り込みましょう。
既存の商品・サービスとまったく同じと思われては継続性に不安を与えてしまいますので、既存サービスとの差異も簡潔に記載しましょう。
記載例を見てみましょう。
ここでは6年以上経験していることも経験があり業界を知っている・コネクションが強いという意味で強みになります。
蓄積したノウハウを活かすことのできる新サービス「SAIYOU」をスタートすることで競合優位性の高いサービスになることをアピールしています。
3-3.「販売ターゲット・販売策略」のポイント
「販売ターゲット・販売戦略」の項目では、以下のポイントを意識しましょう。
- ターゲット層と販売戦略の内容が合致するように記載
- 短期的な集客のみでなく、リピーター獲得戦略など長期的にこれまで培った経験・能力・人脈等が活かせる戦略であることをアピール
商品・サービスのターゲットを具体的に言語化した上で、販売戦略がそのターゲット層にアプローチできる合致した内容であることが重要です。
また、短期的な集客のみでは安定性・継続性に不安を与えます。
どのような背景があってリピーターが生まれ、持続的に集客を行えるのか記載しましょう。
3-4.「競合・市場など起業を取り巻く状況」のポイント
- 事業の市場について成長・衰退しているか、成長できる理由の記載
- 他社と違う営業ノウハウや仕入れ・販売ルートをアピールマクロとミクロどちらの視点でも分析をしている(マクロとは市場全体、ミクロは競合他社や周辺の商圏)
公庫担当者は代表者自身がどれだけ解像度高く事業のことを考え、理解し、準備を行なっているかを見ます。
市場や競合他社について詳しく、情報収集が十分にできていることは信頼感につながります。
創業する業界について、「市場規模」「競合の数」「競合との差別化」はきちんと言語化しておきましょう。
4.取引先・取引関係等
販売先・仕入先・外注先は「事業の商流」を理解してもらうための重要な項目です。
具体的に記載をした上で、必要に応じて商流を記した別紙(商流図)も用意しましょう。
4-1.「販売先」のポイント
- 取引先が決まっていないときは見込先を書く
- 取引先企業の信用状況をあらかじめ調査しておく取引先が一般消費者の場合は具体的に書く
販売先は予測売上の根拠につながる項目です。
審査面談でも具体的に聞かれる箇所なのでしっかり説明できるように事前に整理しましょう。
対法人と対個人でそれぞれ記載の内容が異なります。
B to B(対企業の取引)
具体的に取引先が決まっている場合は固有名詞と住所を記入します。
取引先が決まっていない場合でも見込先は記入するようにしましょう。
既に契約を締結している会社はSランクとし、商談成立の確度の高いエビデンス(メールやSNSでのやり取り)が出せる場合にはAランクとしています。
更に確度が低くエビデンスも出せないような場合はBランクとします。
Bランクであっても取引先名は多めに書いてることにマイナスは有りません。
思いつく限り記載したほうが良いでしょう。
B to C(対個人の取引)
対個人の場合には一般顧客と記載します。
それだけでは具体性がないため、男女別・年代・地域・所得など様々な属性を記載し、人物像が伝わることが望ましいです。
4-2.「仕入先」のポイント
信用のある仕入先業者かどうかを確認します。
- 仕入先は事業計画書を提出するまでに確定させる
- 仕入が必要な業種であれば記入します。
大手企業や社歴の長い企業と取引があると、審査評価が高くなるだけではなく事業自体も安定します。
仕入先が決まっていないと審査評価は下がってしまうので見込みでもいいので記載するようにしましょう。
4-3.「外注先」のポイント
- 何の業務をどこに、いくら外注するのかを明確に
- 支払条件をできるだけ良い条件として見せる
「何の業務」を「どこにいくらで外注」するのか。
また、なぜ外注が必要なのかと説明できるようにしましょう。
記載例は下記です。
5.従業員
これから起業する事業やお店の人員数を記入します。
従業員数が過剰人数だと人件費が増え運転資金を圧迫してしまいます。
逆に、従業員数が不足している場合は事業運営に支障をきたすことに繋がるため、適正人数になっているか確認しましょう。
記載例の場合、2名が役員、2名が従業員になります。
今期は0期スタートとした場合、来期1期目は何名になっているのか、2期目はどうかなど記載すると更に具体的に人員計画が伝わります。
別紙[人件費・業務委託費明細]
6.お借入の状況
個人事業の場合は創業者、法人の場合は代表者個人の借入状況を記入します。
例:住宅ローンや車のローンなど
6.「お借入の状況」のポイント
- キャッシングやカードローン等の個人的な借入がある場合は、念の為CICを取得しておくカードローンは借入残高ではなく極度額を記入
- 延滞がある場合は事業計画書を提出するまでに解消させるのがベター
この項目では事業外の借入のみ記載します。
事業用の借入やビジネスローンは記載しないように注意してください。
たとえば、日本政策金融公庫は借入申込書を受領後、必ず個人信用情報を照会します。
どんなに事業計画が素晴らしくても、個人信用情報に事故歴や大幅な延滞の履歴などがあると、大きなマイナスとなります。
引っ越しや海外転勤などをきっかけに、カードの引き落しがかかっていないにも関わらず督促状が届かず、自覚がないまま延滞や事故になっているケースが散見されます。
念の為、ご自身の個人信用情報を事前に取得してから融資申込をされることをお勧めします。
7.必要な資金と調達方法
表の左側には事業を経営していく上で必要な資金について、表の右側には計上した資金の資調達方法を記入していきます。
記入が完了したら最後に、左の表の合計額と右の表の合計額が一致していることを確認しましょう。
設備資金
設備資金はいわゆるイニシャルコストです。事業を開始するために最低限必要なものが該当します。
例えば下記のようなものが該当します。
- 店舗の内装や外装の工事代金
- PC機器やソフトウェア購入代金
- 店舗や事務所の敷金や保証金
- 営業車両の購入代金
WEBサイトなども、決算において貸借対照表上の資産に計上する等、一定の条件を満たす場合には設備資金として計上が可能です。
設備資金は疎明資料として見積書や領収書などの提出を求められる場合があります。
運転資金
運転資金はいわゆるランニングコストです。事業が軌道に乗るまでに必要となる資金を記入しましょう。
- 毎月発生する仕入資金
- 広告宣伝費
- システム開発などの外注費
- 人件費
自己資金
事業資金と運転資金に充てられる手持ちの金額を記入します。
あらかじめ通帳に入金しておき融資担当に見せられるようにしておきましょう。
親、兄弟、知人、友人等からの借入借入見込みがある場合に記入します。
この場合、必ず振込にしてもらい「誰からいくら入金があったか」証明できる状態にしましょう。
他の金融機関等からの借入
他の金融機関からの借入見込みがある場合に記入します。
日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入
自己資金、知人からの借入、他行からの借入で不足する金額(今回の融資希望金額)を記入します。
日本政策金融公庫の新創業融資制度においては、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要とされますが、自己資金の比率が多いほど創業融資の審査は有利になることが多いです。
8.事業の見通し(月平均)
重要な部分です。起業後の事業収支を記入します。
「別紙参照」と記載して、別紙の月々の資金繰り表を添付する場合もあります。
8.「事業の見通し」のポイント
- 返済原資となる1年後の利益(余剰)の金額を意識する
- 数字の根拠を誰が見ても分かるように計算式で示す
- 実現可能性を意識しつつ、早期黒字化できる計画にする
毎月の売上金額、どの程度の期間で黒字になるのか、安定的な返済ができる予測利益か。
公庫担当者が安定性と継続性を見極める大きなポイントとなる項目です。
実現可能な範囲で、できるだけ売上の立ちが早く、黒字転換のタイミングが早い計画を意識しましょう。
売上高
売上高は**「1年後又は軌道に乗った後」の時点で、十分に返済原資が確保できることを示すのに最も重要です。**
元金の返済は利益の中から行います。
利益と減価償却費を足したものを「返済キャッシュフロー」などと呼びますが、返済キャッシュフローは、月々の元金返済の3倍程度あると良いとも言われます。
一つの例ですが、事業の見通しを作成する場合、記載例のような年間の収支表を最低でも2年分作成すると公庫フォーマットの「6 事業の見通し」の「創業期」「軌道に乗った後」の2つを同時に作成することが可能です。
「創業期」「軌道に乗った後」の間の売上の遷移などもわかりやすく公庫担当者の事業に対する理解度が深まります。
公庫フォーマットの「6 事業の見通し」の右欄にもありますが、売上の根拠が必要になります。
根拠は下記のように別紙で「単価」×「個数」で示します。
売上原価(仕入高)
売上原価は、売上高×原価率で求めます(上図参照)。
原価率は業界・業種によって違うので業界の平均値を採用するのが安全です。
日本政策金融公庫の「小企業の経営指標」の数値も参考にしてください。
経費
経費の項目は次の4点です。
- 人件費
- 家賃
- 支払利息
- その他
事業にあわせて必要な経費をもれなく計上すべきですので、「その他」に集計しつつ、別紙で経費明細を付けるのもひとつの方法です。
支払利息は次の計算式で算出します。
支払利息=借入希望金額×金利÷12ヶ月
日本政策金融公庫の新創業融資の金利はこちらです。基準金利の一番低い金利で計算すれば良いです。
利益
創業初月から黒字になるようにする必要はありませんが、できれば半年以内、遅くとも1年以内に黒字化する計画にすることをお勧めします。
ただし記入例にあるように創業当初は無理やりバラ色の計画を作り営業利益を黒字にする必要はありません。マイナスになっていても、自己資金と借入等のキャッシュでマイナスをカバーでき(資金がショートしない)、かつ、来期にマイナスを取り戻し黒字化できる計画にすれば問題ありません。
無理に利益を出そうと、根拠のないバラ色の計画を作るより、「小さく生み出し大きくしていく」という公庫の理念に則り、硬い計画を作ったほうが好まれます。
営業利益の目安はざっくりと下記のように考えればよろしいかと思います。
- 収支計画0期・・・創業0期は赤字でもよい👍
- 収支計画1期・・・営業利益が出るように売上高で調整👍
- 収支計画2期以降・・・営業利益が500万円以内に落ち着くように調整👍 →利益が出すぎても現実味がないので注意⚠
9.自由記述欄
事業計画書の自由記述欄は、事業やサービスを自由にアピールできる項目です。
日本政策金融公庫の創業計画書のフォーマットには「追加でアピールしたいこと、事業を行ううえでの悩み、欲しいアドバイス等」と記載されています。
契約には至っていないものの前向きに進んでいる事業進捗など、上記項目で書ききれなかった点を記述してアピールしましょう。
一方で事業を行ううえでの悩みや欲しいアドバイスを書くと、場合によっては事業に自信がないと受け止められ、マイナスの評価を受けるかもしれません。
悩みは解決した上で、アピールポイントを記載しましょう。
事業計画書の書き方をチェックして創業融資を成功させよう
本記事では事業計画書の書き方を解説しました。
記事を読んで少しでも書き方のイメージができたのであれば幸いです。
創業融資はメリットが大きくある一方で、一度失敗すると「一定期間は融資を受けれない」「次回以降の融資の審査が厳しくなる」といったリスクもあります。
事業計画書の作成支援サービスを利用するメリットと支援業者の選び方については「事業計画書は作成支援を依頼すべき?作成支援者の選び方を解説」で解説しています。
また、事業計画書の添削をしてほしい、今相談している方とは別の視点から意見が聞きたい、事業や資金調達に関してのアドバイスがほしいという方は、お気軽に無料相談をご利用ください。