若林 哲平
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「融資を受けたいが、個人保証を付けたくない」「公庫や保証協会以外に使える制度があるのか知りたい」——これらは創業期の起業家から最も多く受ける相談の一つです。
実は、メジャーな創業融資の裏には、知る人ぞ知る公的支援制度がいくつも存在します。うまく活用することで、保証コストを抑えながら資金調達の選択肢を広げられます。
この記事では、INQが実務で使ってきた穴場の公的制度と、経営者の連帯保証を外すための具体的な方法を解説します。
1. 経営者の連帯保証とは?なぜ問題になるか
連帯保証の仕組み
融資を受ける際、金融機関から「代表者個人が連帯保証人になること」を求められるケースがあります。連帯保証とは、会社が返済できなくなった場合、経営者個人が代わりに返済する義務を負う仕組みです。
なぜ問題になるか
- 事業が失敗した場合、個人資産(自宅・預貯金など)が差し押さえられるリスク
- 経営者の精神的・心理的な負担になる
- 次の起業・再チャレンジへの心理的ハードルが上がる
- 優秀な人材が起業を躊躇する原因にもなっている
政府もこの問題を認識しており、近年「経営者保証に依存しない融資」を推進する制度が相次いで整備されています。
2. 連帯保証を外せる制度・方法
① 日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」
公庫の融資で、一定の要件を満たした場合に経営者保証なしで借りられる制度です。
主な要件
- 法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている
- 財務情報の適時開示ができている
- 法人のみの資産・収益で返済できる見通しがある
詳細:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/keitoku.html
② スタートアップ創出促進保証
2023年に創設された制度で、創業前〜創業5年未満のスタートアップを対象に、経営者保証なしで信用保証協会の保証付き融資を受けられます。
主な特徴
- 保証限度額:3,500万円(うち無担保無保証:3,500万円)
- 対象:創業前〜創業5年未満
- 条件:創業計画の提出、モニタリングへの協力など
- 保証料率:通常より高め(保証料なしの代替として)
※他条件最新情報については公式サイトを確認ください:https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2023/230220startup.html
③ 事業者選択型経営者保証非提供促進特別保証制度
2024年に創設された制度。経営者保証を提供しない代わりに、通常より高い保証料率が適用されるが、保証人リスクなしで融資を受けられます。
※他条件最新情報については公式サイトを確認ください:https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2024/240315.html
④ 民間金融機関との交渉
制度に頼らずとも、十分な自己資本比率・財務の透明性・安定した収益があれば、民間銀行が自主的に保証なし融資を提案するケースもあります。VCからの出資実績がある場合も交渉材料になります。
3. 知られていない穴場公的制度7選
INQが実務で活用してきた、知名度は低いが効果的な公的支援制度を紹介します。
① 特定創業支援事業(全国)
市区町村が実施する創業支援セミナーや窓口相談を受けることで「特定創業支援等事業による支援を受けた証明書」が発行されます。
受けられる特典
- 会社設立時の登録免許税が通常の半額に(例:株式会社なら15万円→7.5万円)
- 日本政策金融公庫の創業融資で自己資金要件が緩和
- 信用保証協会の保証料が優遇されるケースも
コストをほとんどかけずに受けられる支援としては費用対効果が非常に高い制度です。
※お住まいの「エリア 特定創業支援事業」で確認してみてください。
② スタートアップ創出促進保証(再掲・活用場面の補足)
前述の通り連帯保証なしで使える制度ですが、「公庫や保証協会の枠をすでに使っている」場合の追加調達手段としても機能します。
③ 女性・若者・シニア創業サポート事業2.0(東京都限定)
東京都が実施する低金利の融資制度。
対象者
- 女性
- 39歳以下の若者
- 55歳以上のシニア
- 創業5年未満の事業者
融資条件
- 固定金利1.25%以内
- 無担保
- 返済期間:最大10年
- 据置期間:最大3年
- 融資限度額:1,500万円以内(女性は2,000万円以内)
注意点:信用保証協会の保証を付けない「プロパー融資型」の制度です。金融機関が独自審査するため、取り組みに積極的な金融機関を選ぶことが重要です。
攻略ポイント:過去の実績から、この制度に積極的な金融機関の情報を持つ専門家(INQなど)経由でアプローチすると審査がスムーズです。
※他条件最新情報については公式サイトを確認ください:
https://sougyou-support.tokyo/
④ ファンドサポート事業(地方自治体)
地方自治体が民間ファンドと連携し、スタートアップに対して助成金・補助金・出資などを組み合わせた支援を行う事業です。自治体によって有り無し、内容が異なりますが、融資と組み合わせることで実質的な資金調達コストを下げられます。
※例:静岡県ファンドサポート事業 https://shizuoka-fundsupport.com/
⑤ 事業可能性評価制度
一部の信用保証協会や金融機関が実施している制度で、外部専門家が事業の可能性を評価し、「お墨付き」を与えるものです。
活用のメリット
- 評価を得ることで、融資審査での定性評価が大きく向上
- 補助金申請の際にも評価結果が有利に働く
⑥ 協調支援型特別保証
プロパー融資と信用保証協会付き融資を同時並行で活用する際に使える特別保証スキームです。金融機関が「プロパー融資の一部リスクを保証協会が分担する」形で、金融機関のリスク許容度を高められます。
複数の金融機関から同時に融資を引き出す「協調融資」とも組み合わせることで、資金調達額の最大化が可能です。
⑦ 資本性ローン(日本政策金融公庫)
融資でありながら、会計・財務上は「自己資本に近い負債」として扱われる特殊な融資制度です。詳細は次章で解説します。
※他条件最新情報については公式サイトを確認ください:
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/57.html
4. 資本性ローンという選択肢
資本性ローンは、創業期のスタートアップにとって特に重要な選択肢です。
3つの特徴
① 期限一括償還:通常の融資が月々の分割返済であるのに対し、資本性ローンは融資期間中は利息のみを支払い、元本は期限到来時に一括返済します。これにより、毎月のキャッシュアウトを大幅に抑えられます。
② 利益変動型金利: 業績に応じて金利が変動する仕組みです。赤字のときは低金利、黒字になると金利が上がります。成長途上の企業に対してキャッシュを残しやすい設計になっています。
③ みなし自己資本(最大のメリット): 資本性ローンは、金融機関の審査において自己資本として扱われる場合があります。
これにより:
- 自己資本比率が改善する
- 他の金融機関から追加融資を引き出しやすくなる
- 「デット調達なのに財務体質が強化される」効果がある
審査で歓迎される条件
- 資本性ローンを使う意義を示せる
- 多様な調達の可能性を語れる
- PMFを達成している
- 返済可能性をしっかりと示せる
審査期間と注意点
資本性ローンの審査には3〜6ヶ月かかります。急ぎで資金が必要な場合には向きません。また、融資後は定期的な業績報告(モニタリング)が求められます。
最適なタイミング
シリーズA前後~が最も使いやすいタイミングです。日本政策金融公庫(国民生活事業)の創業融資「卒業」後の次の一手として位置づけると効果的です。
5. まとめ:制度を組み合わせた資金調達戦略
公的制度は「単独で使うもの」ではなく、複数の制度を組み合わせることで効果が最大化します。
創業フェーズ別の活用イメージ
創業前〜創業直後
- 特定創業支援事業で登録免許税を抑える
- スタートアップ創出促進保証で連帯保証なしの融資を確保
- 日本政策金融公庫の創業融資
創業1〜3年(プレA〜シリーズA)
- 資本性ローンで自己資本を強化しながら追加融資を引き出す
- 女性・若者・シニア創業サポート事業(対象者の場合)
- 保証協会付き融資と協調融資の組み合わせ
シリーズA以降
- プロパー融資へのシフト
- ベンチャーデットの活用
どの制度をどのタイミングで組み合わせるかは、自社の状況によって最適解が変わります。INQの無料相談では、個社の状況に合わせた制度活用の戦略設計をご支援しています。
この記事で参照したPodcastエピソード:
- #10 デットファイナンスの連帯保証って怖くないですか?
- #11 スタートアップ創出促進保証とは?
- #72 女性・若者・シニア創業サポート事業2.0 徹底解説 前編
- #73 女性・若者・シニア創業サポート事業2.0 徹底解説 後編
- #81 創業期に知っておきたい…地味に効く穴場公的制度7選 前編
- #82 創業期に知っておきたい…地味に効く穴場公的制度7選 後編
- #85 借入なのに自己資本?【資本性ローン】の3つの特徴
より詳しい解説はPodcastでお聴きいただけます。




