若林 哲平
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「融資はスタートアップに向かない」という時代は終わりました。データを見ると、創業融資市場は着実に拡大し、デット手段も多様化しています。
この記事では、創業融資市場の実態を数字で読み解きながら、従来の銀行融資にとどまらないデット手段の全体像を整理します。
1. データで見る創業融資市場の実態
信用保証協会データが示すもの
中小企業庁が出している、信用保証協会の保証実績データから、創業を中心に数字をみると、件数や金額は増加傾向にあります。(前提:中小企業庁が出している、信用保証協会の保証実績から、信用保証協会が保証承諾した融資のうち、創業の件数を中心に調査)
※保証実績の公表(信用保証協会別の金融機関別、信用保証協会別、金融機関別) | 中小企業庁
主な傾向:
- 保証承諾件数の全体数は、コロナ禍の令和2年度(約194万件)をピークに落ち着き、令和6年度は約57万件
- 一方で「創業」件数は右肩上がりで、コロナ前の平成30年度(25,744件)と比較し、令和6年度は37,382件と約1.45倍に増加
- 保証承諾件数全体に占める創業の割合(件数ベース)は、平成30年度の4.07%から、令和6年度には6.51%まで上昇
「スタートアップ向け融資」の台頭
従来の「中小企業向け創業融資」に加え、VCバックのスタートアップを対象とした「スタートアップ特化型融資」が増加しています。
メガバンク・地銀・信用金庫がスタートアップ向けの専門部署・専門商品を立ち上げておる現象があり、総じて市場の裾野が拡大しているといえるでしょう。
2. 「融資は伸び悩んでいる」は本当か
起業家が感じる「難しさ」の正体
「スタートアップへの融資は厳しい」という声がある一方、データ上は市場が拡大しています。この矛盾はどこから来るのでしょうか。
理由①:「使い方を知らない」問題
融資の手段・タイミング・準備方法を知らないまま申し込み、審査に落ちるケースが多い。正しい準備をすれば通る案件が、準備不足で落ちているケースが相当数あります。
理由②:スタートアップ間の二極化
金利上昇の環境もあり、事業の蓋然性やスケールが見込める等のスタートアップとそうではないスタートアップへの融資実行の差。
理由③:いわゆるデット性の種類が増えすぎて選べない
銀行融資・ベンチャーデット・ファクタリング・RBF・BNPLなど、選択肢が増えたことで、「何を使えばいいかわかならい」という声が生まれています。
結論:市場は伸びているが、知っている人とそうでない人の差が開いている
デットファイナンス市場全体は拡大しています。問題は「選択肢があることを、そもそも知っているかどうかと、準備の差」が結果の差につながっていることです。
3. デット手段の多様化:全体マップ
現在スタートアップが活用できるデット手段を整理します。

手段別の特徴一覧
公的融資(公庫・保証協会)
- 低金利・長期返済
- 創業直後から使える
- 審査に時間がかかる(1〜2ヶ月)
ベンチャーデット
- 銀行融資より柔軟な審査
- ワラントあり・なしの選択肢
- シリーズA以降が主な対象
資本性ローン
- 期限一括償還・みなし自己資本
- 自己資本比率の改善効果
- 審査に3〜6ヶ月
オルタナティブレンディング(RBF・ファクタリング・BNPL)
- スピードが速い
- 銀行融資が難しい局面での補完
- コストは銀行融資より高め
4. 多様化を加速させた3つの背景
背景①:エクイティ市場の変化
エクイティ調達の難化・長期化により「エクイティ以外の手段でどう資金を調達するか」というニーズが急増。この需要を取り込むべく、新しいデット商品・プレイヤーが続々と参入しました。
背景②:テクノロジーによる審査の進化
従来の銀行融資は「決算書・担保・保証人」を中心とした審査でしたが、MRR・ARR・チャーンレート・ユニットエコノミクスなどを指標とした評価審査モデルの構築やデータ連携により、スタートアップに対応した融資が可能になりました。
RBFやファクタリングも、リアルタイムの売上データを活用した自動審査システムにより、スピーディーな提供が可能になっています。
背景③:政府・金融機関のスタートアップ支援強化
政府のスタートアップ育成5か年計画を受け、民間の金融機関や企業がスタートアップ向け専門商品を開発・投入するケースが増えました。競争が生まれることで、条件改善・多様化が加速しています。
5. 手段の選び方:自社フェーズ×目的で考える
多様化した手段の中から「現状、自社に最適なもの」を選ぶための考え方を整理します。
判断軸①:今のフェーズ
上記の「フェーズ別デット手段マップ」を起点に、自社が今どのフェーズにいるかを確認します。
判断軸②:何のために借りるか(目的)
| 目的 | 向いている手段 |
|---|---|
| 創業の初期資金 | 公庫・保証協会付き融資 |
| 成長投資の先行資金 | ベンチャーデット・BNPL・RBF |
| 自己資本比率の改善 | 資本性ローン |
| 売掛金の早期現金化 | ファクタリング |
| エクイティラウンド間のブリッジ | ベンチャーデット・RBF |
判断軸③:スピード vs コスト
急ぎで資金が必要な場合はオルタナティブレンディング(数日〜数週間)、コストを抑えたい場合は公的融資(1〜2ヶ月)というトレードオフがあります。
判断軸④:希薄化の許容度
エクイティを追加発行したくない局面では、ワラントなしのベンチャーデット・公的融資・オルタナティブレンディングを優先します。
6. まとめ
【スタートアップのデット環境:現状整理】
✅ 創業融資市場は拡大傾向
✅ 「難しい」と感じるのは知っているか・準備の問題が大きい
✅ デット手段は急速に多様化(公的融資・ベンチャーデット・オルタナティブなど)
✅ 「何を選ぶか」の判断力が今後のスタートアップに必須の能力に
【手段選択の4つの判断軸】
① 今のフェーズ(シード・シリーズA・ミドル)
② 何のために借りるか(目的)
③ スピード vs コストのトレードオフ
④ 希薄化の許容度
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この記事で参照したPodcastエピソード:
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