若林 哲平
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「地銀はスタートアップに融資してくれない」——そう思っている起業家はまだ多い。しかし実態は変わりつつあります。
2025年、山梨中央銀行が「スタートアップ統括室」を新設し、3年間で500件の支援を目標に掲げた事例は、地銀全体の変化を象徴しています。
この記事では、なぜ今地銀がスタートアップ融資に本気を出しているのか、山梨中央銀行の取り組みを具体的な事例として解説しながら、地銀をうまく活用するためのポイントをまとめます。
1. なぜ今、地銀がスタートアップに目を向けているのか
地銀が直面する構造的な課題
地方銀行は長年、地域の中小企業・個人への融資を主なビジネスとしてきました。しかし近年、以下の構造的な課題に直面しています。
- 地域経済の縮小:人口減少・高齢化による地域の中小企業の廃業・縮小
- 低金利環境:従来の融資では利ざやが稼ぎにくい
- 大手銀行・フィンテックとの競争激化:顧客獲得が難しくなっている
この状況を打開する一手として、多くの地銀が「スタートアップ支援」を新たな成長戦略の柱に据え始めています。
政府・金融庁の後押し
政府の「スタートアップ育成5か年計画」を受け、金融庁も地域金融機関のスタートアップ支援を後押しする方針を明確にしています。地銀にとって「スタートアップ融資への積極的な取り組み」は、監督当局から評価される行動になっています。
スタートアップ支援が地銀にもたらすメリット
- 将来の優良顧客の獲得:今日のスタートアップが10年後に大企業になる可能性
- 地域経済の活性化:新産業の創出による地域の雇用・税収増
- 大企業ネットワークとの接続:スタートアップを通じた大企業との新たな関係
- 金融庁・投資家からの評価向上
2. 山梨中央銀行の取り組み:「地銀っぽくない」スピード感
スタートアップ統括室の新設
山梨中央銀行は「スタートアップ統括室」という専門部署を新設し、スタートアップ支援を組織として本格化させました。
一般的な地銀では、スタートアップへの融資は通常の法人営業担当者が対応するケースが多く、スタートアップの事業特性への理解に差があります。専門部署を置くことで、スタートアップ審査に特化したノウハウを蓄積・活用できるようになっています。
「3年間で500件」という目標
スタートアップ支援の目標として掲げるのが「3年間で500件」という数字です。
この目標の特徴はスピード感にあります。地銀らしくない「数値目標を持った積極的な姿勢」は、業界での評判を変えつつあります。
東京に19拠点という意外な強み
山梨中央銀行は山梨県を地盤とする地銀ですが、東京都内に19拠点を持っています。
「山梨の地銀だから東京のスタートアップには関係ない」という印象は誤りです。東京のスタートアップでも、山梨中央銀行のエリア内(東京拠点)であればアプローチが可能です。
実証実験がしやすい環境
山梨県は人口規模がコンパクトで、実証実験や新事業の立ち上げに適した環境を持っています。スタートアップが「地方展開の足がかり」として山梨を選ぶケースもあり、山梨中央銀行との関係が自然に生まれやすい土壌があります。
支援の幅広さ:融資から出資まで
山梨中央銀行のスタートアップ支援は融資だけに留まりません。
| 支援内容 | 詳細 |
|---|---|
| 創業融資 | 創業期のスタートアップへの保証協会付き融資・プロパー融資 |
| ベンチャーデット | VCバックスタートアップへの成長資金 |
| エクイティ投資 | CVCを通じた出資 |
| ビジネスマッチング | 山梨・東京の顧客企業との接続 |
| 新産業創出 | 地域課題を解決するスタートアップの誘致・支援 |
「融資だけでなく、エクイティ投資・ビジネスマッチング・新産業創出まで一気通貫でサポートする」というスタンスは、メガバンクと張り合える独自の価値を持っています。
※Youtube スタートアップ投資TV 「融資相談室」でも語っていただきました。
3. 地銀がスタートアップ融資で持つ強み
山梨中央銀行の事例から見えてくる、地銀全体がスタートアップ融資で持つ強みをまとめます。
強み①:地域密着のリレーション
地銀は地域の企業・行政・支援機関と深いネットワークを持っています。スタートアップにとっては「地域への参入・展開」という観点で、地銀のネットワークが価値を持ちます。
強み②:意思決定のスピード
メガバンクは本部決裁が複雑で時間がかかりますが、地銀は支店長・地域本部レベルで判断できる裁量があるケースが多い。スタートアップの「スピード感」に対応しやすい構造です。
強み③:スタートアップ特化の専門体制が整いつつある
山梨中央銀行のように、専門部署・専門担当者を置く地銀が増えています。スタートアップの事業特性(赤字成長・エクイティ調達との組み合わせ)を理解した担当者と話せることは、審査の質にも影響します。
強み④:大企業ネットワークの活用
地銀は地域の大企業・自治体との深いつながりを持っています。スタートアップとの「大企業マッチング」を通じた事業支援は、メガバンクや信用金庫とは異なる独自の価値です。
4. 地銀を活用すべきスタートアップの条件
向いているケース
① 地方展開・地域課題解決を視野に入れている
地域密着の事業や、地方市場への展開を考えているスタートアップは地銀との親和性が高い。
② シリーズA以降で中規模の融資ニーズがある
数千万円〜数億円規模のプロパー融資・ベンチャーデットを検討しているフェーズ。メガバンクほど大口でなくても対応してもらえる。
③ 実証実験・PoC(概念実証)の場を探している
地方でのパイロット展開に協力してもらいながら、融資も受けるという両面での連携が可能。
④ 長期的なメインバンクを探している
「融資だけの関係でなく、成長を一緒に考えてくれるパートナー」を求めているスタートアップ。
向いていないケース
- シード初期でまだ事業モデルが固まっていない
- 全国・海外展開が主眼で地域との関係を作る予定がない
- 数億円を超える大型調達が必要(メガバンク・専業ファンドの方が向いている)
5. 地銀へのアプローチの仕方
ステップ①:スタートアップ支援に積極的な地銀をリストアップ
「どの地銀でもいい」わけではありません。スタートアップ専門部署を持つ地銀、支援実績の多い地銀を優先してアプローチします。
情報収集の方法:
- 業界ネットワーク・先輩起業家からの口コミ
- 各地銀のプレスリリース・ウェブサイト(スタートアップ支援の専門ページがあるかチェック)
- INQのような支援機関経由での紹介
ステップ②:「今すぐ借りたい」ではなく「知ってもらう」から始める
地銀との関係構築は、融資が必要になる前から始めることが重要です。スタートアップ支援担当者に会い、事業を説明し、顔を覚えてもらうことが最初の一歩です
ステップ③:地域との接点を作る
地銀が最も動きやすいのは「この企業を支援することで地域が豊かになる」と説明できるケースです。地域への雇用創出・課題解決・産業育成という文脈を事業計画に盛り込むことで、地銀の審査担当者が稟議を書きやすくなります。
6. まとめ
【地銀がスタートアップ融資に本気を出している理由】
✅ 地域経済縮小への対応として新たな顧客層が必要
✅ 政府・金融庁の後押しで積極姿勢が評価される
✅ 将来の優良顧客獲得という長期的な投資
【山梨中央銀行の特徴】
✅ スタートアップ統括室を新設・3年500件目標
✅ 東京に19拠点(山梨だけでない)
✅ 融資〜出資〜ビジネスマッチングの一気通貫支援
【地銀活用のポイント】
✅ スタートアップ専門体制がある地銀を選ぶ
✅ 融資が必要になる前から関係を始める
✅ 地域との接点・地域への貢献を事業計画に盛り込む
地銀との具体的なアプローチ方法については、INQの無料相談でご支援しています。
この記事で参照したPodcastエピソード:
より詳しい解説はPodcastでお聴きいただけます。




